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新たな血で蘇る『ドラキュラ伯爵』※注!ネタバレ含みます。【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.38】

新たな血で蘇る『ドラキュラ伯爵』※注!ネタバレ含みます。【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.38】

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『SHERLOCK』の作り手たちが新たに送り出すのは…



 新年を非常に縁起の悪いキャラクターに乗っ取られたひとも少なくないだろう。NETFLIXで配信が始まった『ドラキュラ伯爵』は、誕生から1世紀以上が経つこの有名な怪物の魅力を改めて思い出させるとともに、新たな魅力も備えている。怪物に新鮮な血を与えたのは、ドラキュラ同様19世紀の住人だったシャーロック・ホームズを『SHERLOCK』で21世紀に復活させたマーク・ゲイティスとスティーヴン・モファットのコンビ。『SHERLOCK』でも顕著だった原作への愛やリスペクト、そこから一歩先に進んだ独自の解釈を持って、伝説の吸血鬼が蘇る。


 配信されたのは全3話のシリーズで、途中意表をつくような展開もあるのでここから先はそういった核心部分にも触れることをお断りしておく。


 第1話は1897年(原作が世に出たのと同じ年)、ハンガリーの教会でひとりの男がシスターに自分の恐ろしい体験について話すところから始まる。男の名はジョナサン・ハーカー。頭髪がなく顔色も悪く、身体中傷だらけで周囲をハエが飛び回っている姿だが、かつては美しい女性との結婚を目前に控えた若き弁護士だった。彼の語りにより、弁護士ジョナサン・ハーカーがロンドンに屋敷を買いたがっている東欧の貴族を訪ねるという、お馴染みの導入部分が始まるという運びだ。ところどころ仕掛けや新たな解釈はあるが、基本的には原作通りのよく知られる筋書きとなっており、始まり方としてとっつきやすい。


 タイトルロールにして新たなドラキュラ伯爵を演じるのはデンマークの俳優クレス・バング。『ザ・スクエア 思いやりの聖域』での軽薄なアートキュレーターの役が記憶に新しいが、太い眉の下で光る小さな瞳がドラキュラに狼的な雰囲気を与えている。吸血鬼を研究し、ハーカーから恐るべき伯爵について報告を聞くシスター・アガサにはドリー・ウェルズ。吸血鬼に興味を持つ彼女の探究心は教会を危機に晒してしまうが、彼女との対決がドラキュラにとっても長い戦いとなる。アガサは物語が始まった時点ですでに吸血鬼の弱点を多く把握しているが、問題は何故それらが伯爵にとって弱点なのかということ。中から招かれない限り敷地や建物に入れない、十字架を直視できないほど嫌う、太陽を浴びると滅ぶ……。それらの理由がわからなければ、真に弱点をおさえたとは言えず、伯爵に裏をかかれる恐れもある。本作は全話に渡ってこの弱点の謎がテーマのひとつになっている。



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