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リハーサルをいつもの50倍以上はやった。サム・メンデス監督『1917 命をかけた伝令』【Director’s Interview Vol.53】

リハーサルをいつもの50倍以上はやった。サム・メンデス監督『1917 命をかけた伝令』【Director’s Interview Vol.53】

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戦地に放り込まれる感覚を表現したい



Q:『西部戦線異状なし』(30)や『地獄の黙示録』(79)のように、事実に基づいたフィクションを目指したと語っていましたが、その他に制作の過程で何か意識した戦争映画はありますか?


サム:撮影のロジャー・ディーキンスと私は、15年前に『ジャーヘッド』(05)を撮っており、その時に大好きな戦争映画を何本も一緒に観た。今回は、これまでのどんな戦争映画とも異なるチャレンジなので、むしろ他の作品を遮断したんだ。他の現場でよく行われる、キャストやスタッフのために参考作品を上映することも一切しなかった。唯一無二の映画を目指したわけさ。


Q:かつてない手法を試みた結果、完成した作品は、最初に思い描いていたイメージから、どのように変化したのでしょう。


サム:あらゆる映画は、俳優のパフォーマンスや、物理的な現実問題などによって、監督が想定したイメージから大きく変化するものだ。しかし今作の場合、編集作業がなかったので、私が想像していた作品にかなり近い状態に仕上がった。撮影時に納得した映像が、そのまま作品に残されているわけだからね。




Q:若き兵士のスコフィールドは、自分の命など二の次にして、仲間を助けるために任務をまっとうしようとします。その勇気は、あなたが映画を作る際のものに似ていませんか?


サム:いや、どちらかと言えば私は勇敢なタイプではない(笑)。でも、表面的には大きく印象が異なる『1917』も『ジャーヘッド』も、私のような臆病な人間が、戦場という極限状態に放り込まれた感覚も描いたつもりだ。極限では、日常生活では絶対にさらけ出されることのない、人間の想像力や弱さが顔を出すし、一方で人間の最大限の能力を知ることもできる。私は勇敢ではないから、そういったことを知るために、スコフィールドという役に託してみたのさ。


Q:映画を観ていない人に詳細は言えませんが、今作の予想を裏切る展開や、全体の構成について、どのような意図があったのですか?


サム:たとえば舞台の場合、3幕の構成があったとして、第1幕では劇的な展開が少ないのが通常のルールだ。ところが今作は、戦場でリアルに起こることを時間の流れとともに描くので、そのような構成のルールを無視することにした。そうすることで戦争における人間の無力さも引き出すことができたと思うんだ。同時に私は、つねに全体の構成を入念に考えて映画を作っている。それが意図的に表れているのが、オープニングとエンディングの関係だ。そこはぜひ、作品を観て確認してほしい。



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