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『スター・ ウォーズ』パロディの傑作『スペースボール』【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.41】

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リック・モラニスのダーク・ヘルメット





 リック・モラニスが扮するのはスクルーブ大統領の手先であるダーク・ヘルメット卿。言うまでもなくダース・ヴェイダーに相当するキャラクターだが、誇張された大きなヘルメットを小柄なモラニスがかぶっている佇まいやシルエットだけで最高だ。別に、火山の惑星での対決の末に全身に火傷を負い、鉄の肺で呼吸しなければならなくなったわけでは全然ないので、マスクはただのファッション。呼吸を助けるどころかかえって息苦しくなってしまうので耐えきれずすぐに素顔を見せてしまうというのは、今ではダース・ヴェイダーのパロディとしてあまりに定番のギャグだが、このダーク・ヘルメットはマスクのデザイン自体もなかなかいいと思う。


 最近では本家の方でもヴェイダーを祖父に持つカイロ・レンをはじめ、皇帝やヴェイダーの側に寝返ったジェダイたちから成る「尋問官」など、ヴェイダーに似たマスクをつけたフォロワー的なキャラクターが増えているが、ヴェイダーを彷彿とさせながらも別物に見えるダーク・ヘルメットも、それらと近いものがある(本家がセルフパロディ色を持ち始めているのも確かだろう)。ダークサイドの戦士でなくとも、そのバリエーションが増え続けているストームトルーパーの一種にでもいそうだ。


 ダーク・ヘルメットを顎で使う大統領スクルーブを演じるのはメル・ブルックスで、ローン・スターに不思議な力を伝授するとんがり耳の老師ヨーグルト(もちろんフォースとヨーダに相当する)と二役である。言わば銀河皇帝とヨーダの両方を演じているようなものだが、しかしどちらかと言えばスクルーブ大統領は皇帝よりもターキン総督に近いのではないだろうか。変な口髭で変な敬礼をするあたり、ブルックスがライフワークとしているヒトラーの戯画化も含まれていそうだ。


 おバカなふたりの下で奔走させられるのがジョージ・ワイナーが演じるサンダース大佐。大統領を皇帝に例えた場合、彼をターキン総督のポジションとして解釈する向きもあるが、ターキンがヴェイダーにこき使われることはないので、どちらかと言えばピエット提督をはじめヴェイダーの下でおっかなびっくり任務にあたる将校たちが相当するだろう。ヘルメット卿や大統領と並ぶとひとり背が高いところもいい味出していて、本作のユーモアは特にこの三人によるトリオ漫才が支えるところも大きいと思う。ローン・スターやヴェスパ姫たちが本家のヒーローたちに基本的に忠実なのに対し、悪役のトリオはベースこそ引用しているものの、だいぶ独自の個性が強く印象的。ちなみにサンダース大佐という名前はカーネル(コロネル=大佐)・サンダースとかかっている。あのカーネルというのは称号なんだな。


 終盤、スペースボールの戦艦(が変形した巨大なメイドロボ)に侵入したローン・スターはダーク・ヘルメットと対決する。その際、例によってヘルメットは自分とローン・スターの関係を明かすが、曰く「私はお前の父親、の兄の甥の従兄弟のルームメイトだ」。要するに赤の他人なのだが、父親の兄の甥というのはローン・スター自身になり得……いや真面目に考えてはダメだ。所詮最後はルームメイトなんだし。



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