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アイアンマンのように飛び、キャプテン・アメリカのように戦う『ロケッティア』【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.43】

アイアンマンのように飛び、キャプテン・アメリカのように戦う『ロケッティア』【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.43】

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「ハワード」が結びつけるヒーローたちの系譜





 マフィアが盗み出したロケットパックは、実業家にして発明家、大富豪ハワード・ヒューズが作り出し、アメリカ軍が兵器として実用化を進めようとしていたものだった。このハワード・ヒューズ、プロフィールや名前からも連想できる通り、マーベル・コミックとその映画化作品群、マーベル・シネマティック・ユニバースにおけるアイアンマンことトニー・スタークと、その父ハワード・スターク両方のモデルである。軍産複合体という考え方がまだなかった頃からそれに近いことを実践し、ついでにプレイボーイ。特に『ロケッティア』のハワード・ヒューズとMCUのハワード・スタークは活動する年代が同時期であり、ふたりとも博覧会を通して未来への展望を見せようとする発明家としても描かれる。


 そして、『ロケッティア』でのハワード・ヒューズの役割は、ジョー・ジョンストンがのちに監督することになる『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』に登場するハワード・スタークと、ぴったり重なるのではないだろうか。ひ弱な身体ながら愛国心と正義感は人一倍というスティーブ・ロジャースが、ムキムキのスーパーソルジャーに変身するのはアースキン教授による超人血清を打たれたためだが、そのスティーブに象徴的なアイテムである盾を作って与えたのはハワード・スタークの役割だ。この盾によって、スティーブは最初のアベンジャー、キャプテン・アメリカとして完成する。


 同じジョンストン監督作であり、同様に第二次世界大戦絡みの物語であることで比較される両作だが、特にふたりのハワードの存在が共通点のひとつとして際立っていると思う。


 そして、ハワード・スタークはアイアンマンことトニー・スタークの父親でもある。つまりふたりのヒーローにとってハワードは共通のルーツなのである。スティーブにとって良き友だったハワードだが、息子トニーとの関係は複雑なまま終わる。スティーブが実の息子トニーよりもハワードのことを知っている。このことはアベンジャーズの二大ヒーローであるふたりの間にある確執を強くする一因となり、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』でついに起爆剤となることが描かれる。


 しかし、同時にそれは、あまりに違いすぎるスティーブとトニーでも、ハワード・スタークとの思い出によって通じ合うことができるという示唆でもあった。


 また両脚を揃えて身体をぴんと水平にし、両手をやや開き気味にバランスを取って飛行するロケッティアの姿は、アイアンマンのそれにも近いものがある。『ロケッティア』でロケットパックの特殊効果を描いてから17年後、光と魔法の工房ILMは『アイアンマン』にて初めてこのパワードスーツのヒーローを飛行させるが、それはロケッティアが進化した姿でもあったのかもしれない。


 最初に空を飛ぶアイアンマン・マーク2は全身がジュラルミンのように銀色で、ロケッティアのロケットパックと同じように継ぎ目に無数の鋲が打たれているが、まるで17年前のロケットパックがそのまま人型にでもなったようではないか。飛行メカとしては『アイアンマン』、大戦ものの冒険活劇としては『ザ・ファースト・アベンジャー』に通じていく『ロケッティア』。そのちょっとした系譜は「ハワード」によって繋がってくる。



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