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『WAVES/ウェイブス』トレイ・エドワード・シュルツ×藤井道人“同世代”監督対談【Director's Interview Vol.68】

『WAVES/ウェイブス』トレイ・エドワード・シュルツ×藤井道人“同世代”監督対談【Director's Interview Vol.68】

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ムーンライト』(16)、『レディ・バード』(17)、『ミッドサマー』(19)……傑作を次々と世に送り出す製作・配給会社「A24」が、目をかけてきた若き映画監督がいる。


トレイ・エドワード・シュルツ。長編初監督作『クリシャ』(14)、『イット・カムズ・アット・ナイト』(17)、そして最新作『WAVES/ウェイブス』(19)と3作にわたってA24と蜜月の関係を築いてきた人物だ。それ以前は、テレンス・マリック監督に師事し、『ツリー・オブ・ライフ』(11)などにアシスタントとして関わったという。


シュルツ監督は、1988年生まれの31歳。『ミッドサマー』のアリ・アスター監督(1986年生まれの33歳)らと共に、今後の映画界を引っ張っていく俊英として期待を寄せられている。最新作『WAVES/ウェイブス』では、マイアミで暮らすアフリカ系アメリカ人の兄妹に起こる受難を、鮮やかで淡い色彩と独創的なカメラワーク、全編を彩る31曲の楽曲で表現した。


そんなシュルツ監督に熱視線を注ぐのが、2月に行われたイベント「新虎CINEMA LOUNGE 〜映画好きのための映画交流会〜  Vol.1 What is A24 ? 新進気鋭の映画会社"A24"を語ろう!」のトークゲストとしても登壇した藤井道人監督。『新聞記者』(19)が、第43回日本アカデミー賞で作品・主演男優・主演女優の3部門の最優秀賞を含む6部門を獲得し、名実共に日本を代表する若手実力派だ。


今回、ふたりの対談が実現。日米の同世代の映画監督は、何を語るのか? 貴重なトークの一部始終を、余すところなくお届けする(聞き手:SYO)。


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アスペクト比の差異で、内面を表現した



藤井:『WAVES/ウェイブス』、とても面白かったです。世界には、同世代でこんなに面白い作品を作れる方がいるんだとワクワクしました。シュルツ監督は、何故この作品を作ろうと思ったんですか?


シュルツ:実は、最初に『WAVES/ウェイブス』のアイデアを思い付いたのは高校生のときなんです。僕はいま31歳なので、かれこれ10年以上温めてきた企画でした。


SYO:劇中の主人公たちと同じ年代のころですね。すごいな……。


シュルツ:ただそのときは、自分が将来映画を作るとは思いもしていなくて、断片的なものでした。その後、いろんな経験を積み重ねてアイデアを収斂(しゅうれん)させ、ようやく実現できました。


製作にあたって、自分や愛する人にとってリアルであることを目指しました。今の自分を――それは人間としても映画監督としても、表現したいとは思っていましたね。本作は、僕にとって最も私的で、大切な作品です。




藤井:ありがとうございます。


SYO:おふたりの作品を拝見してきて、藤井監督の作品もシュルツ監督の作品も、カメラワークが先鋭的な印象です。そのあたりはいかがでしょうか。


藤井:そうですね、ぜひカメラマン選びについてもお聞きしたいです。前作『イット・カムズ・アット・ナイト』と同じカメラマンと伺ったのですが、どうやって決めていらっしゃるのでしょう?


シュルツ:ドリュー(・ダニエルズ)との出会いは、まったくの偶然でした。最初は友だちに撮影をお願いしていたんですが、彼がREDカメラを扱えなくて、ドリューを紹介してくれたんです。出会った瞬間に意気投合して、今では最も大切なコラボレーターの1人です。


藤井:すごく魅力的なカメラワークでした。


シュルツ:ありがとう! カメラワークを通して登場人物の心情を表現したかったから、撮影リストは細かく準備して撮影に入りました。


そのうえで、現場であらゆることを試して、何がベストかを探っていきましたね。登場人物の内面も、彼らを取り巻く環境も、どう表現すればいいかをね。




藤井:僕の次の映画も、『WAVES/ウェイブス』と同じようにシネスコからワイドにアスペクト比が変わるんです。どんな思いからそうしたんでしょう? 僕は心情を表現するためにその演出を使ったのですが。


シュルツ:タイラー(ケルヴィン・ハリソン・ジュニア)のシーンは1.85:1(アメリカンビスタ)から始まってだんだん1.33:1(4:3)に縮小していくんですが、彼の世界が崩壊していく、狭まっていくのを表現するために使いました。


そして、エミリー(テイラー・ラッセル)のターンになるとその逆に、1.33から1.85に広がっていく。こちらは、世界が再生していくことを示しています。僕も藤井さんと同じで、アスペクト比をツールとして使って、彼らの内面を表現したかったんです。



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