1. CINEMORE(シネモア)
  2. NEWS/特集
  3. 【ミニシアター再訪】第14回 映画の街・銀座からの巻き返し・・・その3 銀座・ミニシアター元年 1987
【ミニシアター再訪】第14回 映画の街・銀座からの巻き返し・・・その3 銀座・ミニシアター元年 1987

【ミニシアター再訪】第14回 映画の街・銀座からの巻き返し・・・その3 銀座・ミニシアター元年 1987

PAGES


シャンテの歴代ベストテン



 文中に登場する日比谷映画や旧有楽座は84年に閉館(有楽座などは場所を変えて後に再オープン)。銀座・日比谷の映画館地図が塗り替えられていったわけだが、そんな中でシャンテシネはアート系映画の受け皿としてスタートし、小ぶりながらも歴史に残る多くの傑作・秀作を世に送り出すことになる。 


 手元にこの劇場の歴代ヒット作のリストがある。トップテンを拾うと、


1位『ベルリン・天使の詩』(公開年=88年、配給=フランス映画社、興行収入=2億2500万円、上映=30週)、


2位『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』(88年、フランス映画社、1億6800万円、25週)、


3位『イル・ポスティーノ』(96年、ブエナビスタ、1億4800万円、19週)、


4位『ナイト・オン・ザ・プラネット』(92年、フランス映画社、1億4500万円、21週)、


5位『フル・モンティ』(97年、20世紀フォックス、1億3600万円、25週)、


6位『日の名残り』(93年、コロムビア映画、1億1700万円、17週)、


7位『秘密と嘘』(96年、フランス映画社、1億800万円、18週)、


8位『セックスと嘘とビデオテープ』(89年、ヘラルド映画、1億600万円、16週)、


9位『英国王のスピーチ』(11年、GAGA、1億100万円、20週)、


10位『チョコレート』(02年、GAGA、9700万円、18週)


という順番になっている(興行収入は100万円未満切り捨て)。

*2014年現在のデータ。


 作品の個性はそれぞれ異なるが、どの作品も質が高い。また、その下を見ると11位の『非情城市』(90年、フランス映画社、9700万円、17週)から22位の『永遠と一日』(98年、フランス映画社、7000万円、13週)まで、1位から22位までの間に12本ものフランス映画社の配給作品がランクインしている。


 これには改めて驚いた。ジム・ジャームシュ(『ナイト・オン・ザ・プラネット』)やテオ・アンゲロプロス(『永遠と一日』)など、多くのすぐれた監督たちを発掘し、彼らの作品を育てることで、ミニシアターファンに強い印象を残してきた会社だが、作品のクオリティだけではなく、興行に関しても大きな功績を残していた。


 もちろん、あくまでも200席ちょっとの劇場での話で、ハリウッド系のメジャーな洋画や大手会社の邦画のように巨大なヒット作とはならないが、小さい規模ながらも、それを必要とする心ある映画ファンたちにしっかりと作品を届け、ヒット作を連発していた。“質”で勝負できて、それがしっかり数字としても反映されていた。そんな時代の幸福感がこのリストからは伝わる。 


 幸福な時代の記憶をとどめる人に会うため、日比谷の東宝本社を訪ねることになった。劇場のはじまり、大ヒット作『ベルリン・天使の詩』のこと、シャンテが育てた人気監督たちについても聞きたい! そんな期待感を胸に日比谷にあるビルの入り口へと足を踏み入れた。


(次回はシャンテの元副支配人がこの劇場のヒット作の思い出を語ります)




◉TOHOシネマズシャンテと、東宝日比谷ビルが囲む一角 (2014年撮影)。


 

前回:【ミニシアター再訪】第13回 映画の街・銀座からの巻き返し・・・その2 ある巨匠とフランス映画社 後編 

次回:【ミニシアター再訪】第15回 映画の街・銀座からの巻き返し・・・その4 シャンテシネのはじまり

 


文:大森さわこ

映画ジャーナリスト。著書に「ロスト・シネマ」(河出書房新社)他、訳書にウディ・アレンの評伝本「ウディ」(D・エヴァニアー著、キネマ旬報社)他。雑誌は「ミュージック・マガジン」、「キネマ旬報」等に寄稿。ウエブ連載をもとにした取材本、「ミニシアター再訪」も刊行予定。



※本記事は、2013年~2014年の間、芸術新聞社運営のWEBサイトにて連載されていた記事です。今回、大森さわこ様と株式会社芸術新聞社様の許可をいただき転載させていただいております。なお、「ミニシアター再訪」は大幅加筆し、新取材も加え、21年にアルテス・パブリッシングより単行本化が予定されています。

PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. NEWS/特集
  3. 【ミニシアター再訪】第14回 映画の街・銀座からの巻き返し・・・その3 銀座・ミニシアター元年 1987