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【ミニシアター再訪】第15回 映画の街・銀座からの巻き返し・・・その4 シャンテシネのはじまり

【ミニシアター再訪】第15回 映画の街・銀座からの巻き返し・・・その4 シャンテシネのはじまり

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 現在も日比谷地区の人気ミニシアターとして続いているTOHOシネマズシャンテ。87年に大手映画会社、東宝が作った初のミニシアターだった。最初の名前は「シャンテシネ」。


 80年代にはヴィム・ヴェンダース監督の『ベルリン・天使の詩』(87)など記録的な大ヒット作が生まれ、その後はジム・シャームッシュ、スパイク・リー、テオ・アンゲロプロス、ホウ・シャオシェン等、世界中の才能ある監督たちに上映の場を提供してきた。


 今もインディペンデント系の話題作・良作を公開して、映画ファンに愛されているシャンテのルーツをこの劇場の元副支配人がふり返る。


※以下記事は、2013年~2014年の間、芸術新聞社運営のWEBサイトにて連載されていた記事です。今回、大森さわこ様と株式会社芸術新聞社様の許可をいただき転載させていただいております。


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東宝初のミニシアター



 1987年に日比谷にオープンした東宝系のミニシアター、シャンテシネ(現TOHOシネマズシャンテ)の設立当時の話を聞くため、シャンテの斜め前のビルに入った東宝本社を訪ねた。 


 シャンテ初期の時代に係長を経て副支配人を担当された高橋昌治専務取締役(取材当時)の話が始まり、東宝という大手会社の歴史の断片が次々に浮かび上がる。 


 まずは87年10月のシャンテのオープニング作品について訊ねてみた。シャンテは2館(シネ1とシネ2)からなるミニシアターで、シネ1のオープニング作品に選ばれたのは、フランス映画社配給のイタリア映画『グッドモーニング・バビロン!』(87)である。 


 「シャンテの第1回作品はフランス映画社のBOWシリーズで幕を開けたいと考えていました。どの作品にするか、フランス映画社としてもかなり迷われたと思うんです。『グッドモーニング・バビロン!』は映画作りにまつわる話で、映画好きの人が好む内容でしたので、結局、オープニング作品となりました」 


 監督はヴィットリオ&パオロ・タヴィアーニでトスカーナ出身の兄弟監督である彼らは『父/パードレ・パドローネ』(77)や『サン★ロレンツォの夜』(82)などがフランス映画社配給で公開され、80年代はイタリア映画界の実力派監督として日本でも大きな注目を集めていた。 


 当時、この映画は87年カンヌ映画祭のコンクール審査外特別招待作品で、主演はハリウッド映画界で活躍していたヴィンセント・スパノやグレタ・スカッキ。イタリアのローカリティが魅力だったそれまでのタヴィアーニ兄弟の監督作と比べるとぐっと華やかな印象があった。 


 主人公はふたりの兄弟で、映画作りを夢見てハリウッドに渡り、第一次大戦の大きな渦に巻き込まれていくという物語。映画の父といわれる創生期の名監督、D・W・グリフィスへのオマージュ的な内容でもあり、映画に対する愛情があふれた作品だ。 


 劇場プログラムの裏表紙に、監督による劇場に対するコメントも載せられている。その一部を引用すると──。 


 「こういうこともあるから私達は映画が好きなのです。つまり、私達が生まれた国とは反対の半球にある国でも、まるで自分の家のように感じられるからです。東京の中心地の新しい映画館のオープン作品として私達の最新作が上映されるのに、自分の家じゃないなんて思えるでしょうか? この新しい映画館のオープンによって皆さんは映画の危機というものを否定なさった。私達二人がますます信じてやまないこの映画に、危機などないと言って下さった」 


 226席のささやかな劇場のオープニングに関して、監督からの祝辞が寄せられているのはとても贅沢だと思う。高橋専務によればそれが実現したのも、フランス映画社の柴田駿社長と川喜多和子副社長という夫妻の力が大きかったようだ。 


 「あの頃、フランス映画社は国内の配給や業務的なことは主に柴田社長が担当されていて、海外の方とのおつきあいや作品の買い付けは川喜多さんが担当されることが多かったようです。おふたりとも両方の仕事を兼任されていましたが、大まかに分けると、それぞれ担当に分かれていたようです。『グッドモーニング・バビロン!』の場合は最初から1館スタートということで、監督の方もこの作品をフランス映画社に任せるので、監督もそれに応えてメッセージを送ってくれたということでしょう。当時は世界の映画監督やプロデューサーと、ご夫妻との関係がひじょうに密だったんです。それがシャンテ・オープンの時には大きな力になった気がします」 



◉記念すべきオープニング作『グッドモーニング・バビロン!』のパンフレットに寄せたタヴィアーニ兄弟のコメント。




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