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【ミニシアター再訪】第20回 映画の街・銀座からの巻き返し・・・その9 シネスイッチ銀座が生まれた

【ミニシアター再訪】第20回 映画の街・銀座からの巻き返し・・・その9 シネスイッチ銀座が生まれた

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劇場を全面改装



 銀座文化劇場のオープンからはすでに30年近く経過していたため、劇場は全面改装となり、新しいミニシアターが誕生することになる。従来のミニシアター同様、洋画作品も上映されるが、邦画上映が意図的にコンセプトとして組み込まれているところが他のミニシアターとは違った。


 「そんな動きの中から、いろいろと新しい邦画も生まれていきました」


 80年代の邦画の上映作品には滝田洋二郎監督の『木村家の人びと』(88)、長崎俊一監督の『誘惑者』(89)、劇作家鴻上尚史の監督デビュー作『ジュリエット・ゲーム』(89)等があり、90年代は相米慎二監督の『お引越し』(93)、『我が人生最悪の時』(94)から始まる林海象監督の“私立探偵濱マイク”シリーズ、岩井俊二監督の『Love Letter』(95)等が上映されている。


 『木村家の人びと』の場合、シネスイッチの歴代興行成績の11位で、この劇場で最もヒットした邦画の1本となっている。バブル期の日本を風刺したコメディで、日々、小銭稼ぎに励む一家の姿が描かれる。海外でも好評を博し(英語題は「The Yen Family」)、特に香港では人気を博したという(それなのにいまだDVD化されていないのが残念だ)。


 「あれはおもしろい映画だったね。海外でリメイクするという話も来ていたようだし。ただ、これまでいい作品は上映してきたけれど、邦画は採算がとれない場合もありましたし、東京一館だけの興行ではビデオ化の時に話題が広がらないため、経済的に厳しい部分もありました」



◉イラストが個性的なシネスイッチのパンフレットも他のミニシアター同様、映画単発でのデザインではなく、雑誌のように統一されたものだった 


 邦画と洋画をスイッチできる劇場というコンセプトでスタートした劇場だったが、歴代の興行成績は1位の『ニュー・シネマ・パラダイス』(89)から10位の『みんな元気』(90)まで洋画が占めている。邦画と洋画が同じようにこの劇場で興行的に受け入れられたわけではないが、それでも21世紀以降の邦画の興行界での快進撃を考えると、80年代から邦画を意識したミニシアターというコンセプトは時代を先取りしていたし、滝田洋二郎や岩井俊二など、その後の日本映画を支える才能を育てた功績も大きい。


 「89年に『ニュー・シネマ・パラダイス』が記録的なヒットとなった後は、洋画のイメージが強くなり、シネスイッチの本来めざした方向とは違う方に進みました。ただ、岩井俊二の作品はレイトショーの『undo』(94) が大ヒットとなり、それを受けて『Love Letter』 も当たりました。この劇場で監督作を公開することで、その後につながる動きはありました」


 岩井作品はシネスイッチでの成功の後、96年に『スワロウテイル』がさらに大きな規模で公開されて大きな話題を呼んだ。


 フジテレビは途中でシネスイッチからは手をひくが、90年代後半以降は連続ドラマの映画化である『踊る大捜査線』シリーズ(98~12)を製作して邦画の歴代興行記録を塗り替え、テレビ発のエンタテインメント映画として新たな方向を見せる。


 原プロデューサーが語るように「その後につながる動き」がこの劇場での邦画の試みの中に潜んでいたことが分かる。


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