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役を抱きしめ共に歩む女優、松岡茉優出演のおすすめ映画10選!

(C) 2020「劇場」製作委員会

役を抱きしめ共に歩む女優、松岡茉優出演のおすすめ映画10選!

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10.『騙し絵の牙』(20) 監督:吉田大八 


『桐島、部活やめるってよ』から8年。吉田大八監督との再タッグ作では、作品をけん引するヒロインの座に抜擢された。この流れ自体が、松岡の成長を物語っているだろう。


「罪の声」で知られる人気作家・塩田武士が、大泉洋を「当て書き」するというプロジェクトを、さらに大泉主演で映画化。不況にあえぐ大手出版社を舞台に、出版業界を騒然とさせるパワーゲームが繰り広げられる。


松岡が演じたのは、仕事に情熱を燃やす文芸誌の編集者。酒の席で大物作家に苦言を呈してしまったりと不器用な部分はありつつも、文学への愛情は人一倍強い、まっすぐな人物だ。しかし、彼女は社長が急逝したことに端を発する社内改革に巻き込まれ、部署を移動することに。腐っていた矢先、カルチャー誌の編集長(大泉)に引き抜かれ、彼の大博打に付き合わされることになる。


裏工作に裏切り、騙しあいといったサスペンス要素に、「雑誌不況の中でどう生き残るか」を考えさせる斬新な企画の打ち出し方、さらには「お仕事映画」としての編集者や作家、経営者のプライドを映し出すドラマも内包された、一級のエンターテインメント。コンゲームを描く映画に不可欠な「テンポ感」も出色で、松岡と大泉に加え宮沢氷魚、池田エライザ、斎藤工、中村倫也、佐野史郎、リリー・フランキー、塚本晋也、國村隼、木村佳乃、小林聡美、佐藤浩市といった面々の個性的な演技を、軽快に切り取っている。


大泉が扮した「売り上げを出すために、奇策を仕掛ける」傲岸不遜なアイデアマンから、多くを学び、自分の信念を通そうとする熱血キャラをパワフルに演じた松岡は、出版業界をリサーチしたうえで本作に挑んだという。マスコミ用のプレス資料では「まっすぐな人すぎて、少し道を外してしまうと面倒くさい人になったり、共感を得られないような人になってしまうという役柄だと思ったので、共演者の方とのバランスを考えながら、試行錯誤しながら演じていました」と語っている。



こうしてみていくと、松岡は自身の演技を突き通す、「個で勝負する」役どころよりも、「他を立てる」ポジションに特性があることが見えてくる。セッターでありボランチ、ポイントゲッターを躍動させるバランサー……。全体を俯瞰する“目”と“技量”を備えた彼女ならではの芸当だ。


主演でなければ本領を発揮できないスターとは一線を画す、主演も助演も関係ない万能型女優――。「美人女優」というステレオタイプを粉砕し、しなやかに突き進んでいく松岡茉優の役者道は、実に人間性にあふれ、血が通っている。



文: SYO

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」「FRIDAYデジタル」「Fan's Voice」「映画.com」「シネマカフェ」「BRUTUS」「DVD&動画配信でーた」等に寄稿。Twitter「syocinema

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