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私は映画で、悪意と戦っていく『カセットテープ・ダイアリーズ』グリンダ・チャーダ監督【Director’s Interview Vol.64】

私は映画で、悪意と戦っていく『カセットテープ・ダイアリーズ』グリンダ・チャーダ監督【Director’s Interview Vol.64】

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英国で最も多作な監督に認定



Q:監督ご自身が、世界によって作られているんですね。非常にグローバルな視野をお持ちなのだと思いました。劇中では、主人公や家族がパキスタン移民であることから迫害を受けますが、監督ご自身はそういった差別や偏見を感じることはありますか?


グリンダ:いつもですよ!(笑)常日頃から感じています。


Q:相互理解って難しいですね……。


グリンダ:最近ブリティッシュ・フィルム・インスティテュート(BFI。英国映画協会)で、現在活躍中の監督で最も多作な人を調べたんです。誰だと思います?


Q:えっ誰だろう……。ダニー・ボイル?


グリンダ:私です!(笑)


Q:えっ! びっくりしました(笑)。


グリンダ:そういう風に思わないでしょ?私の作る作品のストーリーがそこまで重要性がないと思われたり、あるいは私を含めてちゃんと宣伝していないからなのかもしれないけれど(笑)。あとは成功しているイギリスの映画作家のイメージに、私が合ってないからかもしれません。


私も「誰だと思う?」て聞かれたら、ダニーって言ったかもしれない。ダニーは実際友だちなんだけど、彼より私の方が多作なんです。


だから、こういった偏見や差別の中でも、活躍していく道はちゃんとあるんですよ。




Q:素晴らしい説得力だ……(笑)。今お話ししていてもそうですし、監督の作品の中にも、ある種の楽観性というか芯の強さがあると思います。ご自身の中でも大切にしている考え方なのでしょうか。


グリンダ:その通りです。世の中に悲観的なことが多いからこそ、常に楽観的でいないと、と思っています。母親でもあるから、子どものたちのことを考えたらやっぱり楽観的でなければいけない、というのもありますね。親になったら、選択肢なんてないと思います(笑)。


Q:責任感が、強くさせるんですね。


グリンダ:そうですね。醜さとか冷酷さが世界にはあるけれど、私は映画を使って戦っていきたい。私と似たようなルックスの人って、映画を作るとこう……文化的な問題を取り上げることが多いんですよね。


それが悪いこととは思いませんが、私自身がそのステレオタイプといつも戦っています。社会を問題視するよりも、その状況から私たちが何を学べるかを祝福すべきだと思っているから。「あの監督はいつも似たような映画を作ってる」という風に言う人もいるけど(苦笑)。


困難な時代だけど、我々の周りには良いものや美しいものもたくさんありますよね。コロナ禍の今まさに、痛みを分かち合うこと、愛を持つことの美しさを、私たちは目にしていると思うんです。


さっき、犬の散歩に行ってきたんですが、近所のお店に張り紙がしてあって。「何か必要なものがあったら、連絡ください」ってFacebookのコミュニティの案内が書いてありました。そういうのって、本当に素敵なことだと思いますね。そういった優しさを、描いていきたいです。


Q:映画でもって、ヒューマンコメディの手法で、社会的なテーマを描く。素晴らしいアプローチだと思います。


グリンダ:だからこれはある種、私にとってのアンチ・ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)映画でもあります。人と人を分断していくものに対する、自分なりの戦い方を示しました。



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