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ファンタジー映画の金字塔!『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ3部作を振り返る

ファンタジー映画の金字塔!『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ3部作を振り返る

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サムの「変わらなさ」が象徴する、絆のドラマ



そして、友情と自己犠牲のドラマといえばやはり、フロドとサムの関係を語らずにはいられない。フロドを慕うサムは、半ば押し掛ける形で指輪を葬るための旅に同行するが、彼の“献身”がフロドの支えになっていく。主従関係にあった両者が、真の友情を築いていくさまが美しい。


フロドとサムの友情は3部作それぞれに見せ場があり、『旅の仲間』では仲間を守るため1人で“滅びの山”に向かおうとするフロドにサムが追いすがり、2人が抱き合うシーン、クライマックスとなる『王の帰還』では「あなたの重荷は担えませんが、あなたを背負うことならできます」と憔悴したフロドを担ぎ、滅びの山の火口へと向かうシーンなどが用意されている。フロドを守るため、サムが巨大なクリーチャーに勇敢に挑んでいく、白熱のバトルシーンも描かれる。


『ロード・オブ・ザ・リング』で興味深いのは、フロドとサムの関係性が逆転していくこと。フロドは指輪の魔力に侵されて悪の道に傾いていきそうになり、代わりに台頭してくるのがサム。一種の「主人公の交代」が起こる展開が、観る者の関心をぐっと引き付けるのではないだろうか。ただ、ここで強調したいのは、「サムは変わらない」ということだ。彼はずっとフロドを慕い続け、両者の“対決”が起こることはない。かつての友人が対立していく構造は作劇の華だが、本シリーズはその方法論を踏襲しないのだ。サムは善を重んじるキャラクターではあるが、そのためにフロドを断罪しない。善の道に常に戻そうと腐心し続ける。




「ヒーローの本質は自己犠牲にあり」とはよく言われるが、孤高になろうとするフロドをサムが止め続ける、という関係性は、ヒーロー映画としてもバディ映画としても、新機軸といえるかもしれない。いわゆる「闇堕ち」を回避する方法を、常に模索し続けるのだ。指輪を葬った後に、“対等”になったフロドとサムのエピローグも描かれており、実に隙がない。2人の関係性の本質は、あくまで友情物語なのだ。


その2人に亀裂を入れるのが、冥王サウロンの魔力を宿した指輪であり、指輪に魅入られたゴラム(アンディ・サーキス)だ。特にゴラムはかつてはフロドたちと同じくホビットの一派であり、いわば指輪に屈した仮想フロドでもある。彼の謀略でフロドとサムの絆がゆがんでいく展開は、観る者の心を大きく揺さぶることだろう。ある種のラブストーリーのように、外的な障害と内的な試練が用意されているのが見事だ。


余談だが、フロドとゴラム、アラゴルンとボロミア、ガンダルフとサルマンといったように表裏一体の存在を的確に配置しているのも、『ロード・オブ・ザ・リング』の秀逸なポイント。両者の内面を細やかに描くことで、善にも悪にも向かってしまう“心”の危うさに訴えかける。それをもたらすのが、本シリーズの最大の敵ともいえる、指輪なのだ。



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