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『事故物件 恐い間取り』怖さは時代で変化する――中田秀夫監督と考える、現代ホラー論【Director's Interview Vol.74】

『事故物件 恐い間取り』怖さは時代で変化する――中田秀夫監督と考える、現代ホラー論【Director's Interview Vol.74】

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リング』シリーズや『仄暗い水の底から』(02)で一世を風靡した、Jホラーの第一人者・中田秀夫監督。


近年は、現代的なサスペンス『スマホを落としただけなのに』(18)や、緊急事態宣言による外出自粛期間を舞台にしたドラマ「リモートで殺される」(20)など、常に“いま”を見据えた恐怖を追求してきた。


その中田監督が新たに挑む題材は、事故物件。“事故物件住みます芸人”の松原タニシによるノンフィクションを、亀梨和也・奈緒・瀬戸康史の共演で映画化したホラー『事故物件 恐い間取り』(8月28日公開)だ。


売れない芸人が、生活のためにテレビ番組の企画に飛びつき、事故物件に住み始めたことから恐怖に遭遇していくさまを描いた本作。中田監督はイベント等で「アメリカのホラー映画の要素を入れた」と発言しており、これまでの作品とは一味違った進化を感じさせる。


ハリウッドでも作品作りを行い、和と洋の映画制作を経験した中田監督が本作で挑んだ、新たな恐怖の描き方とは? 現代ホラー論と共に、お届けする。


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「怖いけど面白い」の塩梅を考え抜いた



Q:本作を拝見して、ホラーとエンタメのバランスが絶妙に感じました。「怖い」と「面白い」の配分を、どのように調整されたのでしょう?


中田:そもそもこの話は、芸人の松原タニシさんが経験した「とにかく事故物件に住んで、何か心霊現象的な映像が撮れたら番組が続けられる。ただし、ヤラセはダメ」というノンフィクションから始まっているわけです。つまり、ドキュメンタリー的な物語ですよね。


住んでいる本人は「とにかく怖いものを撮ろう」と必死なわけだけど、ちょっと引いてみると「幽霊が出てくることが番組のネタになり、主人公の食い扶持になる」構造になっている。テレビ業界ならではの「面白いものを追求して、視聴者の興味を引く」という思考が、根底にあるんです。


それを表現するためには、いわゆるJホラーの「幽霊がぼんやり立っている」的な演出だけではなく、エンタメの文脈に落とし込まないと成立させにくいな、という思いがありました。


「事故物件に住んでいる」ことを、観る側に「面白い」と思わせないといけない。




Q:なるほど…!本人にとっては「怖い」けど、観る側にとっては「面白い」状態を作り出すこと――それが、そのまま作品のカラーを示しているんですね。


中田:「怖いけど、面白い」って一体、どういうことなのか……。そこについては今回、大分考えましたね。


モニターに映る心霊映像は怖いものだけれど、スタジオでそれを見たクロちゃんが「キャー」と叫ぶのは面白い。その塩梅は非常に難しかったです。最終的には、編集や音楽、効果音でバランスをとっていきました。


今まで知らなかったテレビ業界の舞台裏を見られたことも、制作の上では大きかったですね。バラエティ番組の「ニンゲン観察バラエティ モニタリング」の収録を見学させていただいて、テレビ番組の在り様を学んだんです。


僕はバックステージものが昔から好きで、デビュー作の『女優霊』(96)もそうだし、そういった“舞台裏”を描ける『事故物件 恐い間取り』は、自分の嗜好性とも合っていました。



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