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映画とウイスキーの意外な関係とは!?

(c)Photofest / Getty Images

映画とウイスキーの意外な関係とは!?

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『007 スカイフォール』(12)

特別な時をザ・マッカランの50年物で




監督:サム・メンデス 出演:ダニエル・クレイグ


記念日にとっておきのウイスキーを開ける。それも何十年も続いた末の記念日となれば、特別な逸品を開けたくなるものだ。007シリーズ23作目『007 スカイフォール』には、そんな特別なウイスキーが登場する。


NATO所属スパイのリストを奪い、MI6本部を爆破したのは元MI6所属ダブルオーセクションのエージェント、ラウル・シルヴァだった。007ことジェームズ・ボンドは彼を追うが、逆に捕らえられてしまう。島全体が廃墟化した場所でシルヴァはボンドにウイスキーを勧める。


「50年物のマッカランだ。キミが特別好きなウイスキーだってことは知っているよ。さて、何に乾杯しよう? 我々が愛した女性にするか?」


『007 スカイフォール』の公開は2012年。007シリーズ1作目『007 ドクター・ノオ』がイギリスで公開された1962年から、ちょうど50周年のアニバーサリー・イヤーの作品である。その記念にシルヴァが振る舞うのは「ザ・マッカラン1962 ファイン&レアコレクション」オフィシャルボトルの「50年物(?)」である。


シェリー酒を熟成させた樽を使うことで独特の風合いや甘みを感じさせつつ、シングルモルト特有の上品な濃厚さを持っているのが、「ザ・マッカラン」だ。スコットランド北部のハイランド地方に位置するスペイサイドは、ウイスキー精製に適した気候で蒸留所も多く、中でもマッカランの蒸留所は「シングルモルトのロールスロイス」とも呼ばれる最高級品を生み出している。


現在も現行商品として流通しているが、30年物ですら数十万はくだらない値段が付いていることもあり、株券のようなやりとりもされているようだ。なので「50年物」ともなれば…… となるところだが。


「ザ・マッカラン」の「50年物」は存在はするものの、樽で50年たっぷり熟成されたウイスキーは木の色が移り、透明感の無い濃い褐色になる。だが、劇中に登場する「50年物」はそこまで濃い色をしておらず、おそらく、古くても25〜30年物程度ではないだろうか。


ここで『007 スカイフォール』という作品の特性を振り返ってみる。この作品は前記した通り007シリーズ50周年記念の作品で、監督を務めたサム・メンデスは過去の007シリーズへのオマージュを散りばめたと、ソフトのオーディオ・コメンタリーで告白している。


代表的なものは、もちろん『007 ゴールドフィンガー』(64)に登場したアストン・マーティンDB5で、丁寧にナンバープレートの「BMT216A」まで同じである。また、マカオでのネオンを背景にシルエットだけで行われるアクションシーンは、タイトル・シークエンスのライブ版と言えるものだ。セリフに注目してみると、もはや早押しクイズのように過去作の名言が羅列されていく。


そんな、ファンにとってのご褒美のような作風を鑑みれば、ウイスキー・ラベルの年数がイコール熟成年数だと勘違いしているシルヴァは「お酒に詳しくない敵役」であり、『007 ロシアより愛をこめて』(63)で魚料理に赤ワインを合わせてしまう、屈強な殺し屋レッド・グラントへのオマージュである。


と、考えるのは穿ち過ぎだろうか。



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