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『スパイの妻』を作った師弟愛。黒沢清・濱口竜介・野原位インタビュー【Director's Interview Vol.84】

『スパイの妻』を作った師弟愛。黒沢清・濱口竜介・野原位インタビュー【Director's Interview Vol.84】

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濱口&野原の、黒沢監督への敬愛



Q:濱口さんと野原さんにとって、『スパイの妻』での挑戦はいかがでしたか?


濱口:普段は脚本家として書いた後に、映画監督としての自分に渡します。そのときに「これは無理でしょ」と思って削って、どんどんスケールダウンしてしまうんです。その“現場の責任”から解放されて、しかも「黒沢さんだったら絶対大丈夫」と胸を借りるつもりだったから、楽しかったですね。


野原:今まで自分がかかわったものは現代劇が多かったのですが、現代劇の場合は「こんなに強いセリフは言えないよね。こんな言葉を言うためには、どんな事件を起こせばいいのか」となってしまう。ただ今回においては、「戦争」という事件がもう起こっているから、強い言葉が生きてくるんですよね。




濱口:こんなにエモーションが高まってもリアリティがあるんだ、というのは発見でしたね。黒沢さんにも、ぜひまたこの時代を……いやこの時代に限らず、現実から離れたものを撮っていただきたいです。すごく観たいです。


野原:僕も黒沢さんのいろんな作品が観たいです。


Q:ファンミーティングみたいになってきましたね……(笑)。


黒沢:(笑)。ありがとうございます。



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監督・脚本:黒沢清

1955年7月19日、兵庫県出身。大学時代から8ミリ映画を撮り始め、『スウィートホーム』(88)で初めて一般商業映画を手掛ける。その後『CURE キュア』(97)で世界的な注目を集め、『ニンゲン合格』(98)、『カリスマ』(99)と話題作が続き、『回路』(00)では第54回カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞。以降も、第56回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品作品『アカルイミライ』(02)、第64回ヴェネチア国際映画祭正式出品作品『叫』(06)と国内外から高い評価を受ける。また『トウキョウソナタ』(08)では、第61回カンヌ国際映画祭ある視点部門審査員賞と第3回アジア・フィルム・アワード作品賞を受賞。「贖罪」(11/WOWOW)は、テレビドラマにも関わらず数多くの国際映画祭で上映された。その他、第8回ローマ映画祭最優秀監督賞を受賞した『Seventh Code セブンス・コード』(13)、第68回カンヌ国際映画祭ある視点部門監督賞を受賞した『岸辺の旅』(14)、第66回ベルリン国際映画祭に正式出品された『クリーピー偽りの隣人』(16)、フランス・ベルギー・日本合作で、オールフランスロケを敢行した『ダゲレオタイプの女』(16)、第70回カンヌ国際映画祭ある視点部門に正式出品された『散歩する侵略者』(16)、ドラマ「予兆 散歩する侵略者」(17/WOWOW)、1ヶ月間ウズベキスタンに滞在し撮影を行った『旅のおわり世界のはじまり』(18)などがある。本作『スパイの妻』で、第77回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門に初めて選出された。

 




脚本:濱口竜介

1978年、神奈川県出身。東京藝術大学院映像研究科で黒沢清に師事し、その修了制作として監督した『PASSION』(08)がサン・セバスチャン国際映画祭や東京フィルメックスに出品され高い評価を得る。その後も、東日本大震災の被災者へのインタビューから成る酒井耕と共同監督した『なみのおと』(12)と『なみのこえ 新地町/気仙沼』(13)、4時間を越える長編『親密さ』(12)など、精力的な制作活動を続けている。ワークショップに参加した演技経験のない女性4人を主演に起用した5時間17分の長編『ハッピーアワー』(15)は、ロカルノ、ナント、シンガポールなど各国の映画祭で主要賞を受賞。芥川賞作家・柴崎友香原作の『寝ても覚めても』(18)で商業デビューし、第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出され、世界から注目を集めた。





脚本:野原位

1983年、栃木県出身。2009年に東京藝術大学大学院映像研究科を修了。在学中は濱口竜介監督作品の助監督を務めながら、伊坂幸太郎原作のオムニバス映画『ラッシュライフ』(09)の一編、寺島しのぶが出演する『京子』を監督。また大学院修了作品として、いしだ壱成が主演する長編映画『Elephant Love』(09)を監督。その後は、CS放送の番組AD、CGプロダクションマネージャーなどの職を経て、拠点を神戸へ移す。監督作品『talk to remember』(15)が広島国際映画祭2015にて上映、17年には台湾での映像ワークショップを開催するなど活動の幅を広げている。濱口竜介、高橋知由とのユニット「はたのこうぼう」で脚本を務めた『ハッピーアワー』(15)は、各国の映画祭で上映され、主要賞を多数受賞した。




取材・文:SYO

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」 「シネマカフェ」 「装苑」「FRIDAYデジタル」「CREA」「BRUTUS」等に寄稿。Twitter「syocinema




『スパイの妻<劇場版>』

2020年10月16日(金)より全国ロードショー

監督:黒沢清

脚本:濱口竜介、野原位、黒沢清

音楽:長岡亮介

出演:蒼井優、高橋一生、東出昌大、坂東龍汰、恒松祐里、笹野高史

配給:ビターズ・エンド

配給協力:『スパイの妻』プロモーションパートナーズ

(c)2020 NHK, NEP, Incline, C&I

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