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『ようこそ映画音響の世界へ』音響編集者自身が監督した傑作ドキュメンタリー ミッジ・コスティン監督インタビュー【Director’s Interview Vol.85】

『ようこそ映画音響の世界へ』音響編集者自身が監督した傑作ドキュメンタリー ミッジ・コスティン監督インタビュー【Director’s Interview Vol.85】

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劇場以外での映画鑑賞が増え、音の重要性はより増している



Q:最後に、このドキュメンタリーでは音響フォーマットの現地点として、ドルビーアトモスを採用した『ROMA/ローマ』(18)に少し触れていましたが、同作に代表される最新型のオブジェクト・オーディオ(注3)に関しては、どのように捉えていますか?


コスティン:私はドルビーアトモスのような、いわゆる没入型のサウンドが好きです。ですが映画は物語が良いものでなければ、それ以上に良くなることはありません。


『ROMA/ローマ』で監督のアルフォンソ・キュアロンは、これまでと違う音の方向性を模索していたのだと思います。人の声をサラウンドに乗せ、共に車に搭乗したり、家族と一緒にテレビを見ているかのような、我々をよりいっそう作品に没入させるアプローチです。それに対し、ウォルター・マーチや彼の後輩であるランディ・トムは「音数が多すぎて気が散る」と、実は批判的でした。しかし、私は革新的で楽しい方法だと思いましたけどね。



私は大きな劇場で没入できる経験をするのが好きです。でも、音の役割は観ている劇場のサイズによって変わるのだとも思うのです。現在は多くの若者たちが、パソコンやスマホで映画を楽しんでいます。自分の同僚の何人かは「映画館が死んでいく」と嘆いていますが、人々が小さなスクリーンで作品を観ることが増えてきている中、むしろこの状況下で音はよりいっそう、重要性を増していると考えています。


小さな画面では役者のクローズアップはあまりエモーショナルではなく、アクションシーンはインパクトが少ないかもしれませんが、音はより重要となり、物語を伝える上での大切な役割を果たします。そして、そこからエモーションや迫力がもたらされるはずです。


(注3)スピーカーを前後左右のほか天井にも配し、水平方向だけでない垂直方向の立体感に対応した音響プログラミング



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