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芥川賞&文藝賞受賞小説×田中裕子×沖田修一『おらおらでひとりいぐも』を作りだしたプロデューサーたち【CINEMORE ACADEMY Vol.12】

芥川賞&文藝賞受賞小説×田中裕子×沖田修一『おらおらでひとりいぐも』を作りだしたプロデューサーたち【CINEMORE ACADEMY Vol.12】

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日本映画の製作費



Q:今回は田中裕子さんが主演で、原作は芥川賞・文藝賞のW受賞作品。演出はベテランの域に差し掛かったかなり優秀な監督が担当。となると、予算規模ってどれぐらいなのでしょうか。例えば1億円なのか3億円なのか、それより上か下か全く想像がつかないのですが。


竹内:一般的には、日本で予算が3億円までいく作品は、収支を考えると公開規模は300館前後必要になることがほとんどです。 


Q:300館とは、かなり大規模ですね。


西ヶ谷:公開規模が300館前後だと目標興収が10億円以上になる。そうなってくると、原作の売上部数は?キャストは?と、色々影響がでてきますね。


竹内:さらに最近では、予算2億円でも300館近く必要になってきているんです。そこは業界全体で頑張らなきゃいけないところで、海外のマーケットを広げていくとか、配信など劇場興収以外のところを、収入に組み込んでいくなどして、予算2億円で100館前後くらいの公開規模で丁寧に広げていくような作品を、本当はもっと作っていくべきなのだとは思うのですが…。


西宮:でも今は、その予算2億円規模の映画が少ないですよね。 


竹内:本当にないですね。いわゆる中間の規模の映画がなくて。


西ヶ谷;中間が成功しないと言われている中で、我々はその中間をやろうとしているんです。




Q:これは予算にも関わって来ると思うのですが、やはりオリジナルではなく原作モノでないと企画は通りにくいのでしょうか?


竹内:オリジナルでも“話が強い”のであれば、やるべきというスタンスですね。


西ヶ谷:オリジナルでも、フックが強いものであれば、原作モノとあまり変わらないと思います。ただ、プロデューサーとしては日頃から色んな原作本を手にしているから、この本を映像化したいと思うことは多いですね。逆に、監督からオリジナル企画を持ち込まれて、それが面白ければ全然動きますね。


西宮:でも今は、この原作をやりましょうっていう発想になってしまっていることが多いかもしれないですね。 


西ヶ谷:監督のデビュー作はオリジナルの方がいいと思ってるんですが、その後はだんだん原作モノにチャレンジしてもらったりします。映画としてちょっと大きめにしていく為に。監督たちも2本、3本と撮っていくと、もう自分の世界って面白くないんですよ。他の人の作った世界に自分をぶつけたくなってきているから、原作モノを渡しやすいんですよね。


Q:なるほど。それは面白いですね。


竹内:今、オリジナルをやるには、超低予算の自主制作に近い規模でやるか、もしくは、海外で受賞経験があって、ある程度プリセールス(企画段階での配給権取引)が見込める監督がやるしかなくて、それ以外は比較的原作ありきの作品が増える傾向にあります。出資者への説得のしやすさも大きいでしょうね。あまりこの流れに乗ってばかりではダメなんですけどね。



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