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『音楽』岩井澤健治監督 実写で既にあるものも、アニメになった瞬間今までなかったものになる【Director's Interview Vol.98】

『音楽』岩井澤健治監督 実写で既にあるものも、アニメになった瞬間今までなかったものになる【Director's Interview Vol.98】

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映画としてのアニメーション



Q:岩井澤監督と映画との出会いについて教えてください。


岩井澤:僕は高校まで野球漬けの毎日だったので、高3で部活を引退した後、夏休みにすごく時間ができてしまったんです。元々漫画が好きでよく読んでいたのですが、その漫画も映画から影響されているような作品が多くて、だったら映画を見てみようかなと。父親が録り溜めた映画のVHSが、家にいっぱいあったんですよ。


そんな中に『ブレードランナー』(82)もあったのですが、SF映画なのに『スター・ウォーズ』(77)なんかとは全然違ってて、アクションも少なくて地味だけど、それが逆にすごく良くて。同じSFでもこんなのがあるのなら、映画って自分が知らない作品がもっともっとたくさんあるんだろうなって思ったんです。そこからたくさん映画を見ましたね。


同時に自分でも作ってみたいと思って、夏休み明けに、家にあった8ミリビデオを学校に持っていき、遊びで回してました。それからクラスメイトに手伝ってもらいながら、作品みたいのものも作ってみたんです。それが楽しかったんですよね。映画を作りたいなと思ったのは、それがきっかけですね。



(C)大橋裕之 ロックンロール・マウンテン Tip Top


Q:アニメで好きな作品はありますか。


岩井澤:僕はアニメも映画の一つとして捉えていまして、そんな中でも、湯浅政明監督の『マインド・ゲーム』(04)や、手塚治虫原作・りんたろう監督の『メトロポリス』(01)が結構好きですね。あんまり評価されているイメージがないので、こういう時にはすごくいい映画だよって推してます。


Q:りんたろう監督は『幻魔大戦』(83)『火の鳥 鳳凰編』(86)なんかが、個人的に印象に残ってますね。湯浅監督は『夜は短し歩けよ乙女』(17)に衝撃を受けまして、それ以来私も大ファンです。以前、トークショーで湯浅監督が「 ど根性ガエル」に影響されたっておっしゃっていて、とても納得したのですが、岩井澤監督は、影響されたアニメなどはありますか。


岩井澤:『マインド・ゲーム』が出てきた時は、今までの日本のアニメーションとは全然違うルックや演出で新鮮でしたよね。まさに先ほど話した多様性が広がっていきそうな感じを受けたのですが、そこから続いたものは残念ながらなかったんですよね。この勢いが消えるのはもったないなと、この『音楽』がまたそういうきっかけになればいいなと思っています。


また、アニメではないのですが、ピーター・ジャクソンからは大きな影響を受けてますね。特に初期のピーター・ジャクソンが好きでして、デビュー作の『バッド・テイスト』(87)なんかは、彼ひとりで何役もやっているんです。監督・脚本・撮影に加えて、小道具の改造銃や宇宙人の造型まで、ほとんど自分でやって出演までしている。作りたいという情熱のまま作って、それが評価されてハリウッドに進出するのがすごい。そのプロセスがすごく良いんですよ。その辺の影響は大きいでしょうね。



ロード・オブ・ザ・リング』(01-03)のメイキングなんか見ていると、超大作のはずなのに、なんかちょっと自主制作的なノリも見えるんです。自分も何かそういうのが出来ればいいなって思いますね。


Q:岩井澤監督の次回作もぜひ見たいです。今度は予算もついて普通の映画のように、一人ではなく多くのスタッフとやることになるのでしょうか。


岩井澤:「音楽」は一人で何役もやらなければいけない状況でしたが、ちゃんとした座組みがあれば、むしろ多くのスタッフと一緒にやりたいですね。絶対に自分の絵がいいといったこだわりもないですし、絵のうまい人はいっぱいいるので、そういう人とやれればいいなと思っています。ただ、ロトスコープという手法は武器になるので、これは続けていきたいですね。


次回はある程度の予算がついて、プロのスタッフの皆さんと一緒にやれば、7年もかからずに1〜2年くらいで劇場アニメが作れるかなと思っています。


Q:では最後に、ここまでインタビューを読んでくださった方に、メッセージを。


岩井澤:アニメって映画として捉えられない部分があったりして、そこをどうにかしたいなと思っていました。『音楽』を見ていただいて、アニメも映画の表現ジャンルの一つなんだと、注目してもらえると嬉しいですね。


次もまたアプローチの違う作品を作ると思うので、どこか頭の片隅に入れておいて、お待ちいただければと思います。『音楽』を見ていただいた方からすると、今度は全然違うテイストのものがきて、「なんだこれは!?」となるかもしれないですけどね。



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監督:岩井澤健治

1981年東京都生まれ。高校卒業後、石井輝男監督に師事、実写映画の現場から映像制作を始め、その傍らアニメーション制作を始める。2008年に初のアニメーション作品「福来町、トンネル路地の男」が完成。以後、アニメーションを中心とした短編映画の制作を続けた後、2012年より自主制作長編アニメーション映画「音楽」を制作。



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。




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