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『すばらしき世界』西川美和監督 「身分帳」全編に、佐木隆三さんのまなざしを感じました【Director’s Interview Vol.105】

『すばらしき世界』西川美和監督 「身分帳」全編に、佐木隆三さんのまなざしを感じました【Director’s Interview Vol.105】

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天候に担わせるものとは?



Q:西川作品は天候も印象的です。今回も大雪から台風まで出てきて、撮影するのは結構大変だったと思いますが、こだわりなどあれば教えてください。


西川:今回の映画は、刑務所から出てきたはいいけど、なかなかうまくいかないという、あまり動的な話ではないんです。変化をつけるのがすごく難しいなと。


何しろ動こうにも動きようのない人の話ですから。誰でも彼でもアパートに呼び寄せちゃうと、ともすれば、アパートの中が舞台になってしまって、画がどんどん狭苦しくなっていく。この動けずに困っている男を、どう動かして画に変化をつけていくか考えた挙句、原作にはなかった台風を入れてみたりしました。大がかりな大扇風機の中で、役所さんがブルブル震えながらやってくださいましたね。


また、幸いにも北海道という設定だったので、雪を生かせましたし、要所要所で晴れたり曇ったりしたのも良かったですね。


Q:台風なんかはいい意味で画にノイズが入ってくるから、動きを感じますよね。何か予兆めいたものも感じて胸もざわつきます。


西川:ありがとうございます。私も台風のシーンは、すごくいいカットが撮れたんじゃないかなと思ってます。


©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会


Q:雪中のシーンも圧倒されました。冒頭の旭川刑務所の出所シーン、雪が降り積もる中で重厚な門が開いていきますが、雪の中での撮影だけでも大変なのに、刑務所の門って開けてくれるものなんでしょうか?あのシーンは迫力があって、この映画の気概を感じました。


西川:もう、法務省の矯正局が全面協力ですから。この映画は。 


Q:そうなんですね。


西川:主人公の三上は旭川刑務所から出てくるので、現地取材しようとしたのですが、まずは法務省に許可を得て、中を見せていただくところから始まったんです。それをきっかけに、プロデューサーが粘り強く法務省に今回の撮影協力をお願いしたところ、是非とも協力したいとお墨付きを頂きました。


現実問題として、刑務所を出た人たちの社会復帰はものすごく難しくて、またすぐに刑務所に戻ってしまう人も多いんです。そこは矯正を司る側としても大きな課題になっているんですね。今回の映画はそこをきちんと描こうとしたこともあり、撮影では随分と厚遇いただきました。


Q:刑務所から出所するシーンは映画でよく見ますが、門が開くのはなかなか見ないなと。


西川:実はあそこは本当の門ではないんです。旭川刑務所って、本当の出入り口はすごくシンプルで、きれいなんですよ。


Q:建て替えできれいになった刑務所だと、「身分帳」のあとがきでも書かれていましたね。


西川:そうなんです。一般の人が実際の旭川刑務所の出入り口を見たときに、これを刑務所の門だと思うかなと。それぐらい淡泊な感じでした。撮影させてもらった門は、いわゆる車両用の通用門みたいなところなんです。そこの大きな鉄の扉が開閉するのをたまたま覗き見てしまったので、「あっちを開けてもらっていいですか⁉︎」って交渉して、撮影させていただきました。


Q:ゴゴゴって門が重厚に開くのを観ると、「おぉ!」と思いますよね。


西川:選択は間違ってなかったですね。




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