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作品自体が何度も挫折を味わった映画とは?江口カン監督『ガチ星』【Director’s Interview Vol.2】

作品自体が何度も挫折を味わった映画とは?江口カン監督『ガチ星』【Director’s Interview Vol.2】

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ずっしりとやられる映画『ガチ星』



Q:実は監督自身も映画と重なる部分があると伺いました。


江口:映画化を目指して始めたものの最初は駄目だったし、結局ドラマになって放送して、、つまりこの「ガチ星」っていうものは、一旦そこで終わってるんですよ。ここで終わるんだなって思ったけど、やっぱり諦めきれず。。実は作品の中身自体に、背中を押された部分もありました。諦めたら終わりだって話をやってるのに、俺、ここで諦めちゃうのかなっていうのがあったんです。


江口:そうして色々ともがいているうちに、本当にいろんな人に協力してもらって、だんだんと浮上してくることが出来ました。だからこの作品自体が、映画の話のように何度も挫折を味わってるっていうことですね。




Q:この映画は、観終わるととても疲れますよね(笑)。観ててつらくなる部分もいっぱいあります。何度も諦めてしまう濱島に、みんなどこかで自分を投影してしまうのかもしれません。


江口:やっぱりそういうしんどい映画が、僕は好きなんでしょうね。自分が好きなもの、自分が見たいものを単に作ったっていうだけなんだけど、この作品は成り立ちがインディーズ的でもあるし、そういう意味では1作目がこの作品だったというのは良かったと思いますね。


Q:監督は普段はCMディレクターをやられてますが、今回CMと映画の違いで苦労されたことなどはありますか。


江口:苦労は予算から来るものが全てですね。本当に。それだけとも言えます。ただ、これは、ある宣伝担当の人から頂いた言葉なんですけど、映画っていうのは出来上がったときは生まれたばかりの赤ちゃんで、これをちゃんと見てもらうためには、そこから育てないといけないという話を聞かされたんです。もう、まさにそうだなと思いました。


江口:CM制作だと、今までは作るところまでで終わっていた。当然、それを作ってるときは面白くなると信じて作ってるんですが、映画の場合は、作ったものを育てて、結果、どれだけの人に、どう面白がってもらうかが、最終的な評価になる。やっぱりそこが一番大きな違いだと思います。だから、面白くならないと、見てもらわないと、意味がない。




Q:最後に、このインタビューを読んでくださった皆さんにメッセージを。


江口:僕は、本当はこういう映画を見たい人はたくさんいるんじゃないのって思ってます。待ってた人たちもたくさんいると思う。例えば「レイジング・ブル」みたいな、ああいう映画が好きだって人には、それなりに面白いと言ってもらえるかなと思ってます。


Q:『ガチ星』はずっしりと、のし掛かってくる映画ですが、でもそこが心地良い感じがありますよね。


江口:そうそう。映画に、やられたなって思うことって、僕は幸せだと思うんですよね。



『ガチ星』を今すぐ観る



監督:江口カン

福岡生まれ。九州芸術工科大学 画像設計学科卒業。‘97年 KOO-KI 共同設立。 ドラマやCM、短編映画などエンターテインメント性の高い作品の演出を数多く手がける。’07~‘09年 世界で最も重要な広告賞として知られるカンヌ国際広告祭で三年連続受賞(Bronze/Bronze/Gold)。Boards Magazine(カナダ)主催「Directors to Watch 2009」14人のうち1人に選出。’10年より3年連続でクリオ賞(アメリカ)審査員。‘13年 東京五輪招致PR映像「Tomorrow begins」のクリエイティブディレクションを務める。 同年、ドラマ「めんたいぴりり」の監督を務め、日本民間放送連盟賞優秀賞、ATP賞ドラマ部門奨励賞、ギャラクシー賞奨励賞受賞。’15年 続編「めんたいぴりり2」が放送。前作に続き2年連続で日本民間放送連盟賞 優秀賞を受賞。同年、Webムービー「TOYOTA G’s『Baseball Party』」の企画・監督を務め、Youtubeで860万ビューを超える盛り上がりを見せ、MLB公式サイト、TV局CBSスポーツ電子版ADWEEK(アメリカ)のサイトに取り上げられるなど話題を呼ぶ。

‘16年4月 競輪発祥の地・小倉を舞台に、夢と人生にもがく、崖っぷちの男たちのドラマ「ガチ★星」(テレビ西日本で2016年4月放送)の企画・監督を務める。 同年11月、ゲーム「龍が如く」の完全オリジナルストーリードラマ「龍が如く 魂の詩。」の監督を務める。本作は、ゲオチャンネルにて配信。2017年1月レンタル開始。12日間でレンタル回数10万回を突破した。映画『めんたいぴりり』が2019年1月公開予定。



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。




『ガチ星』

2018年4月7日福岡中洲大洋、5月26日新宿K’s cinema、小倉昭和館ほか 全国順次公開

©2017空気 /PYLON

配給:株式会社マグネタイズ
配給協力:太秦株式会社

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