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お化け一家『アダムス・ファミリー』の魅力【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.4】

お化け一家『アダムス・ファミリー』の魅力【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.4】

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スタイリッシュな映画版とポップな原作漫画





 1991年の『 アダムス・ファミリー』はソネンフェルドの監督デビュー作である。ラウル・ジュリアとアンジェリカ・ヒューストンが演じるアダムス夫妻や、クリストファー・ロイド扮する怪物的なフェスターおじさん、クリスティーナ・リッチの長女ウェンズデー(当時11歳)をはじめ、キャラクターたちは奇妙だがリアルな造形で、一家が暮らす屋敷も不思議な仕掛けがたくさんありながら、あくまで全体は写実的で重厚な雰囲気にまとめられている。


 ダークな映像を彩るマーク・シェイマンによる音楽も忘れられない。お馴染みのテーマ曲は60年代のテレビドラマ版から使われていたが、それをより壮大なテーマにアレンジしている。


 一方原作の一コマ漫画はずっとコミカルだ。どちらかというと前述のテレビドラマ版「アダムスのお化け一家」の雰囲気のほうが漫画に近い。キャラクターはみんなとぼけた表情でかわいらしく、いろいろ物騒なことをしているのだが憎めない。


 一コマ漫画というのはブラックユーモアとの相性が良い。一コマだけで完結しているから変に説明し過ぎず、セリフがなくても絵の中で可笑しなこと、ゾッとすることが起こっていることが伝わる。


 たとえば、映画のオープニングで楽しげに合唱するクリスマスの聖歌隊に向かって、屋根の上からアダムス一家が油の煮えたぎる大鍋をゆっくり傾けていくシーンは、丸ごと原作からの引用だ。セリフやキャプションは無いが、一家がおせっかいな聖歌隊をどう思っているのか、何をしようとしているのか、このあとなにが起こるのか、それらが一瞬で理解できる構図となっている。


 ポイントは「惨劇」を直接描写しないこと。これこそブラックユーモアの肝だと思う。大変なことが起ころうとしている直前を切り取ったものでなければ、ただの悪趣味でしかない。


 これらの原作漫画は、「 アダムス・ファミリー全集」(チャールズ・アダムス(著)/H・ケヴィン・ミゼロッキ(編)/安原和見(訳)/河出書房新社)で見ることができる。この本は未発表のスケッチも収録され、チャールズ・アダムス本人によるキャラクター紹介文も載っていてかなり豪華だ。


 そんな原作漫画のかわいさに比べると映画版はかなり気取っているように見えるけれど、これは90~00年代におけるコミック等の実写化作品の、とにかくリアルに、暗く描こうという、1989年のバートン版『 バットマン』から始まる流れの中にあったからじゃないかなと思う。そう考えれば『アダムス・ファミリー』の実写スタイルには、間接的にバートンの影響もあったと言える。



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