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お化け一家『アダムス・ファミリー』の魅力【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.4】

お化け一家『アダムス・ファミリー』の魅力【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.4】

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なんだかんだ普通の家族なところがいい





 廃墟のような屋敷で暮らし、毒薬や拷問器具を好み、嵐の日に生きる喜びを感じる不気味なお化け一家アダムスだが、別に本当のお化けではない。風変わりな言動や体質、能力があったとしても、彼らは基本的には普通の人間だ。ただ不気味で変わっているというだけ。


 普通の人間なので命の危険を感じたりもするし、死を恐れたりもする。映画ではゴメスの兄フェスターが長年の行方不明から戻ってくることで物語が動き出すが、もう会えないとばかり思っていた兄と再会してゴメスは感激する(もっともフェスターおじさんはどんな目にあっても死なさそうに見えるが……)。


 つねに死を彷彿とさせる不穏な気配のあるアダムス家でも、家族の死はもちろん悲しく、恐ろしいことなのだ。


 この作品の魅力とは、洒脱なブラックユーモアや不気味な小道具だけではなく、それらに彩られた中にわりと平凡な家族がいるところだと思う。作っているのは棺桶や拷問台かもしれないが、シャツの袖をまくった父親が子供たちと一緒に日曜大工をやっている様子には変わりない。母親が子どもたちに寝る前の読み聞かせをするという当たり前のような光景でありながら、部屋の壁にはどこからか拝借してきた道路標識のコレクションがある。基本的にはありふれたおうちで、本人たちも自分たちを普通の家族だと思っている。だからこそ生まれるギャップが楽しい。


 それはちょうどハンナ・バーベラ・プロダクションのアニメ「原始家族フリントストーン」や「 宇宙家族ジェットソン」のような、特殊な世界観でありながら、あくまで平凡な家族のお話なのでとっつきやすい、というのと近いのかもしれない(ちなみに「アダムス・ファミリー」もハンナ・バーベラでアニメ化されている)。


 どんな家族でもそれぞれ個性があり、家ごとにルールが違ったりする。アダムス一家の場合もそれが際立っているというだけなのである。ぼくは、そういう自分たちらしさに正直で自信に満ち溢れた一家が大好きだし、余計な説明無しに一コマで全てを伝えるチャールズ・アダムスの作品にも憧れる。


 バートンとアダムス家の親和性は、もちろん不気味な雰囲気やゴシック趣味が近いというところもあるだろうけれど、風変わりな自分たちの個性を肯定して自信を持っているところにもあるのではないか。


 「グリンチ」をはじめスース作品から影響を受けたバートン、バートンと「アダムス・ファミリー」の親和性、バートンとイルミネーションによって「アダムス・ファミリー」が企画されていたこと(少なくともそんな噂があったこと)を思うと、今度のイルミネーションのアニメ版『グリンチ』には巡り合わせを感じるけれど、今後バートン版『アダムス・ファミリー』実現の可能性はあるだろうか?



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