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抜群のビジュアルセンスを持つCMディレクターが挑んだ、意外な映画的アプローチとは?小島淳二監督『形のない骨』【Director’s Interview Vol.6】

抜群のビジュアルセンスを持つCMディレクターが挑んだ、意外な映画的アプローチとは?小島淳二監督『形のない骨』【Director’s Interview Vol.6】

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TSUBAKIやマキアージュなど、資生堂のメインブランドのCMを長年にわたって手がけ、「女性美の魔術師」と呼ばれた小島淳二監督が、自身で企画から立ち上げ、5年の歳月をかけて挑んだ映画『形のない骨』。小島監督がつくってきた壮麗で華やかなCMが映し出す世界とは真逆のベクトルとなる、「人間の内面」をリアルに描き出した本作を手がけた理由とは?


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導き出した自分なりの「映画」



Q:この映画が生まれた経緯を教えてください。


小島:ずっと東京でCMディレクターをやっていたのですが、あまりに忙しすぎて、このままで良いかと色々考えた時に、40歳ぐらいで一度福岡に移ろうと決意しました。それで福岡に住み始めてから、昔から好きだった映画を一度掘り下げて勉強してみようと思ったんです。


 もともとはゴダールや、デヴィッド・リンチなど、ファッション的でスタイリッシュなものが好きだったのですが、それまであまり観ていなかったウディ・アレンやイングマール・ベルイマンなど、色んな映画も観るようになりました。そこで、これまで気づかなかった映画の面白さに目覚めたんです。映像の格好良さだけではなく、自分の恥ずかしいところを表現するような私的な映画も、何て面白いんだと。


 そんな中、自分自身も映画に向き合おうと思って、じゃあもう脚本書いてみようと。それが5年ぐらい前ですかね。そこがこの映画のスタートだと思います。




Q:5年前の時点で、映画の内容は決まっていたのでしょうか。


小島:そうですね。5年前に書き始めた時から、あまり筋は変わってないです。女性のドロドロした裏側を見つめるといったテーマがあって、そこから始まった感じですね。


Q:映画の中では 主人公である女性の人生がどんどん追い詰められていきます。何故そこにフォーカスして、テーマとして取り上げたのでしょうか。


小島:映画では追い詰められているように見えるかもしれませんが、自分では、もう少し優しい目線で主人公のことを見てるつもりです。基本的に描きたかったのは、母性愛というか、女性が究極に追いこまれたときは、愛情を持っていろんなことに接するのではないかというところを、表現してみたかったんです。




Q:追い詰められている状況や、それを取り巻く家族・人間関係がとてもリアルだったように思います。リアルだった分、余計に痛々しく心に刺さりました。また、監督が普段の広告の仕事で得意とされている、ファッション・ビューティー系の映像とは真逆のアプローチだったので、とても驚きました。


小島:映画というものを使って何を伝えられるか、自分なりの方法論含めて考え抜いたのですが、答えを見つけたときには、もうこの話でしか出来なくなったというか。自分なりの映画の答えがそこにあったんです。


 普段自分が作っているCMとアプローチが違うことは、誤解を生む可能性もあり、ある意味危険なことなのかもしれませんが、スタイルを変えることを怖がってもしょうがないと思いました。どう受け止められようと、今自分が思ってる方法論はこれだと思ったので、突き進みました。最初は、テーマや企画についてなかなか理解してもらえなかったですけどね(苦笑)。



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