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『猿の惑星』三つの色を持つ住人たち【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.13】

『猿の惑星』三つの色を持つ住人たち【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.13】

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力を持て余すゴリラの軍隊





 チンパンジーやオランウータンが猿社会の文化や知識を受け持っているなら、武力の面はゴリラの担当だ。前述の二種よりも大柄で強いゴリラは、基本的に戦闘員で、軍隊を構成している。猿の惑星に不時着した人間たちが最初に目にするのが、退化した人類を追い詰めて狩るゴリラ兵士たちの、ショッキングな光景だった。2作目ではウルサス将軍が、禁断の地に潜んでいる人類の生き残りに戦いを挑んだために最悪の結末を迎え、5作目ではアルドー将軍が核戦争の後で辛うじて共存していたエイプと人類の関係に不満を持って反乱を起こすなど、ゴリラたちの好戦的な性格はたびたびトラブルを起こすが、物語を動かしていく要素でもある。服は紫色で黒いベスト、皮膚は暗く体毛は黒い。棍棒や銃で武装しているのも特徴。


 厄介な乱暴者として描かれるゴリラだが、人類への革命を描いた4作目『猿の惑星・征服』やリブート三部作では、それはもう強くて頼もしい味方だった。チンパンジーやオランウータンも非力ではないが、やはりゴリラがいてこその戦いだっただろう。重要な戦力として役割を果たした彼らが、相応の地位を求めるのも不思議ではない。かなりワルに描かれがちなゴリラだが、現実のゴリラは強いけれど温厚であるということは覚えておこう。


 三色の衣装を着る三種類のエイプたち。衣装の色の起源は彼らが人類の奴隷として使役される様子が描かれた4作目で明らかとなる。奴隷時代のエイプたちはそれぞれ、チンパンジーが緑色、オランウータンがオレンジ色、ゴリラが赤いつなぎを着ていたのだ。見るからに囚人服で、人類による支配や抑圧を象徴する衣装だったにも関わらず、人類に勝利し、地球を支配したあとでもエイプたちは服装にこれらの色を取り入れ、三色によって三種が塗り分けられている。この三色は屈辱の時代を象徴していると同時に、知能と力を得た彼らの起源、アイデンティティでもあったのだろう。

 

 このように猿の惑星の住人たちは微妙なバランスを保っている。シリーズは猿と人類という異種の関係がテーマだが、猿の中にも明確な階級や違いがあることも忘れられない。猿社会にも軋轢の気配があるからこそ、異種間の物語としての厚みが増しているのだろう。それぞれの猿たちの違いはキャラクターを際立たせ、半世紀経っても色褪せることのないシリーズの魅力となっているのだ。




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イラスト・文: 川原瑞丸

1991年生まれ。イラストレーター。雑誌や書籍の装画・挿絵のほかに映画や本のイラストコラムなど。「SPUR」(集英社)で新作映画レビュー連載中。 

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