1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 観客がワクワクする楽しい映画にしたい!御法川修監督『母さんがどんなに僕を嫌いでも』【Director’s Interview Vol.12】
観客がワクワクする楽しい映画にしたい!御法川修監督『母さんがどんなに僕を嫌いでも』【Director’s Interview Vol.12】

観客がワクワクする楽しい映画にしたい!御法川修監督『母さんがどんなに僕を嫌いでも』【Director’s Interview Vol.12】

PAGES


 人気ブロガーの歌川たいじが2013年に出版したコミックエッセイ『母さんがどんなに僕を嫌いでも』。母親からの暴力や児童保護施設に入れられた経験など、自身の壮絶な過去の経験が綴られる。それでも母の愛を諦めなかった姿は、読者の熱い反響を呼んだ。この原作を、若手俳優の中でもその演技力の高さが一目置かれる太賀と、人気実力を兼ね備えた女優・吉田羊を迎え映画化。その二人の魅力を最大限に引き出し、まとめあげた御法川修監督に、今回の映画について熱く語ってもらった。


Index


原作から受けた「気づき」



Q:今回、原作を映画化したいと思われたきっかけを教えてください。


御法川:僕が原作から受け取った大きな気づきは、「人生は循環できる」ということでした。育児放棄や虐待といった問題に意識が向かいがちですが、観客の皆さんにはフレームを大きく広げてもらいたいと思っています。原作者の歌川さんのような壮絶な生い立ちではないにせよ、誰だって思い返すことが辛い記憶や、瘡蓋(かさぶた)のまま放置している心の傷を抱えていると思うんですね。生身の人間が何も傷つかないで生きることなんて不可能です。


 でも、そういったネガティブな感情を、断捨離のごとく整理して切り捨てるんじゃなくて、今明るく生きることによって得られた優しい気持ちを、自分の中にいる「かつて愛されなかった自分」の意識に渡していくことができる。よどんだ水も循環することで、きれいな水に浄化できますよね。主人公の青年が、いかに自らの人生を循環させていくか、そのプロセスを成長物語として描くのなら、映画化を試みる価値があると思ったんです。


 映画のラストで、再び冒頭のシーンへとつながっていくのも、円環する人生を描きたいという想いから発想した語り口です。映画を観終えた時に、まんまるく幸せな円が結ばれたような感覚を抱いてほしかったんです。歌川さんの人生から得た気づきは、児童虐待の問題を超えて、様々な苦しみを乗り越えるヒントになると思います。


 もう一つ原作に惹かれたポイントは、登場人物が魅力的で「濃い」ところでした。僕たちの日常って、相手との関係を築くときに空気をよんでばかりで、深く関わることを避けている気がするんですね。だから逆に、濃密な人間関係に憧れを抱くところがあって、映画の中では現実よりも体温の高い人たちを描きたかったんです。おおらかに喜怒哀楽を解放して、泣いたり笑ったり、飛び跳ねたり、友と体を寄せ合ったり。現実とは少しかけ離れた体温の高さを、ひとつの希望として観客に贈り届けたかったんです。

 



 主演の太賀さんには、「現実のリアリティよりも10cm浮かした世界観」の映画にしたいと伝えていました。感情表現の幅を、現実よりも微妙に高めたかったわけです。現実のリアリティと、映画やドラマの中で感じさせるリアリティって別の次元にあるものなんです。今回の映画で彼がみせた演技が自然に感じられたとしても、実際は身も心も絞り切らないと表出できないレベルです。映画の純度を高めてくれたのは、間違いなく太賀さんのおかげです。



PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
counter
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 観客がワクワクする楽しい映画にしたい!御法川修監督『母さんがどんなに僕を嫌いでも』【Director’s Interview Vol.12】