1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 予想を現実が越えてくる瞬間が、ドキュメンタリーの醍醐味。加瀬澤充監督『牧師といのちの崖』【Director’s Interview Vol.17】
予想を現実が越えてくる瞬間が、ドキュメンタリーの醍醐味。加瀬澤充監督『牧師といのちの崖』【Director’s Interview Vol.17】

予想を現実が越えてくる瞬間が、ドキュメンタリーの醍醐味。加瀬澤充監督『牧師といのちの崖』【Director’s Interview Vol.17】

PAGES


つながり直す場所



Q:藤藪さんについて聞かせてください。自殺を望んでいる人を説得し保護して、さらにそこから本人が自立できるまで、生活する場所や働く場所を提供する。牧師さんとはいえ、そうそうできることではないと思いますが。


加瀬澤:そうですね。そういう人たちの思いを常に受け止め続けることは、そうとう重たいと思います。僕はたった1年間行っただけですが、僕自身メンタル的にも非常に不安定になったりしました。でも藤藪さんがそれをやり続けられるのは、牧師ということで、ある種の信仰が支えになっているところもあると思います。また、藤藪さん自身の人柄もあると思いますし、奥さんや周りの人間との関係性もあって、この活動を続けられるんだろうなと思いました。ただ、そう簡単にはできないですよね。結構超人的だと思います。


Q:そうですよね。


加瀬澤:白浜っていう場所もあるかもしれませんね。しんどいときはしんどいけど、楽しいときは楽しいんです。あそこの場所は、すごく緩やかな日常みたいなものが流れているんです。




Q:藤藪さんの行動で印象に残ったのは、自殺を止めさせて保護した人と「簡単な約束をする」ということでした。「明日、朝ご飯の時にみんな集まるから、あなたも来てね。」って約束するとその人は来てくれる。人間って、約束すると反故にしちゃ駄目だっていうような本能が働くのでしょうか。


加瀬澤:そうですね。その約束の先には誰かがいて、ちゃんとつながっているっていうことが大事だと思うんです。人間ってすごく不安定だったりするので、今日も頑張ろうって思える日もあれば、今日はしんどいなって思う日もある。その揺れが激しくなるときに、しんどい、もう死んでしまおうって思ったりするんです。そのときにどこかでつながっていて、人との関係性があるっていうことが、すごく大事なんですよね。


 藤藪さんたちがいるあの場所は、すごく濃密な人間関係があるんです。今の時代は、そういう部分での希薄さみたいなものがあって、つながりが切れてしまった人たちが、あの場所でもう一度つながり直すという、再生のプロセスを得ているんだと思います。ある意味、今の時代を象徴する場所のような感じはしています。



PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 予想を現実が越えてくる瞬間が、ドキュメンタリーの醍醐味。加瀬澤充監督『牧師といのちの崖』【Director’s Interview Vol.17】