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古くて新しいチョコレート工場【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.18】

古くて新しいチョコレート工場【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.18】

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チョコレート工場とディズニーランド





 食いしん坊のドイツ少年オーガスタスが落っこちてしまうチョコレートの川や、そのまま食べられるお菓子が植物のように生い茂る丘は、チョコレート工場を象徴する風景だ。チョコレートの川を、ゲストたちを乗せたボートが進んでいくわけだが、なんとなくテーマパークのアトラクションのようだ。たとえば、ディズニーランドの「ジャングル・クルーズ」のような……。


 それもそのはず、『夢のチョコレート工場』の美術監督を務めたハーパー・ゴフはディズニーランドのコンセプト・アーティストで、「ジャングル・クルーズ」のスケッチも残している。構図や雰囲気だけでなく、ボートの形もどこか似ているほど。通じるものを感じるのも当然だ。ゴフはそのほかにもウォルト・ディズニーが晩年に構想した未来都市「エプコット」のために図案を描いたりもしている。


 不思議なチョコレート工場を見学するというストーリー自体、テーマパークのアトラクションのようだ。レトロな特撮や小道具、手作り感も、テーマパークや子ども番組のセットに通じる(奇抜な人物がホストとなる不思議なセットと言えば、「ピーウィーのプレイハウス」なんかが思い浮かぶ)。だからこそ工場見学に来たチャーリーたちは実際にそこで遊んでいるように見えるのだが、楽しんだり遊んだりしているひとには自然と共感してしまうもので、気付くと観ている自分もチョコレート工場で過ごしているように感じられる。


 チョコレート工場はウィリー・ワンカの個人的な世界、箱庭のような場所。そういう場所を描くのにディズニーランドのコンセプト・アートを描いてきたゴフというひとはぴったりだ。子どもたちを招いた不思議な人物ワンカも、だんだんウォルト・ディズニーそのひとと重なってくる。ディズニーランドには映画の世界を体験する特撮の遊園地としての側面があり、チョコレート工場は逆に特撮と美術によって映画を通して遊園地気分を味わせてくれる。そう考えると、対になるようでおもしろい。



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