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60歳になったら監督を辞めるつもりだった『半世界』阪本順治監督【Director’s Interview Vol.19】

60歳になったら監督を辞めるつもりだった『半世界』阪本順治監督【Director’s Interview Vol.19】

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意識する相手は役者ではなく役柄



Q:出演されたメインキャストの3人は、同級生で仲が良い設定ですが、その辺はどう演出されたのでしょうか。撮影前に3人で会ったりしたのでしょうか。


阪本:それ、どっちを選択するかなんですよ。「取りあえず3人で飯でも食ってこい。それで親睦を深めて役に反映させろ」っていうか、「映画の中だけで、あくまで役として交流してくれ」というか。そして今回は後者だったわけです。


 役者はそれぞれ自分の想像で、脚本に書かれてない部分を考えるわけです。その役が中学時代に何をやっていてどんな風に遊んでいたとか、共演相手を踏まえた上で自分なりに作るんです。それは、事前に共有するのではなく、現場でポンとぶつけたほうがいいときがあるんですよ。


 仲良くなり過ぎると、じゃれ合ってるのと変わらなくなっちゃう。思春期の話じゃないからね。自分が今まで背負ってきたものを、自分が演じる役に反映させなきゃいけない。役者同士仲良くなると、それがちょっと希薄になるときもありますよ。


Q:なるほど。


阪本:だから、例えば長谷川博己くん自体を知ってもしょうがないんですよ。長谷川くんが演じる役を感じなきゃいけないからね。だからみんなで飲んだのは、映画が完成した後の東京国際映画祭のときが初めて。




Q:そうなんですね。


阪本:レッドカーペットの後でね。そうするとみんなそれぞれ、役を演じ切った後だから、演じる前にわいわいやるのとは違ってるよね。人の人生を一瞬だけど生きた、その余韻を持って一緒に飲むからね。


Q:面白いですね。


阪本:で、俺の方はというと、撮影前にメインキャストとは1対1で必ず飲むんです。いわば自分のことをバラすっていうのかな「僕、こんな変なところあるんで」って言うと、向こうも自分のことをバラしてくるんだよ。誰にも吐露したことのないこととかね(笑)。そうやって仲良くなるというか、お互いを知るんだよね。すると俺が現場で、どういう言葉で言えばいいのかなと悩んだときに、それを先読みしてくれたりするんですよ。俺がちょっとしどろもどろになっても、監督、ああいう性格だから、たぶんこういうこと言いたいんだろうって、読み取ってくれることもある。


 もちろんそういう一対一の儀式が嫌いな監督もいますよ。でも俺はそれをやってきたんだよね。





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