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40年ぶりの復活『風たちの午後』デジタルリマスター公開記念!矢崎仁司監督+金子由里奈監督特別対談【Director’s Interview Vol.21】

40年ぶりの復活『風たちの午後』デジタルリマスター公開記念!矢崎仁司監督+金子由里奈監督特別対談【Director’s Interview Vol.21】

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矢崎仁司が切り取るもの



金子:矢崎監督は時間の描き方に個性がありますよね。『風たちの午後』の冒頭も時間を確かに刻む水滴の音がしています。『花虫』のときも、男女が階段に座って朝を待つシーンで変わっていく瞬間を描いていましたよね。


矢崎:「変化するときが美しい」っていうのね。


金子:そうです。まさにそれ「変化するときが美しい」です。矢崎監督が、この『風たちの午後』の24歳のときからずっと、「変化するとき」を映画内に探し続けてるのかなって思いました。


矢崎:うん、そうだね、たぶん一番美しいと思うんですよね。夕方から夜になるとか、夜が朝になるとか、その変わる瞬間が本当に美しいと思うので、人もきっと、変わる時ってすごくきれいだろうなって。


金子:『花虫』の階段のシーンもワンカットで撮ってて、明るさが徐々に変化するんです。『花虫』を見た当時、コンビニで早朝バイトしてたんですけど、映画見てから、コンビニの中から早朝が朝になる様子を見るのが好きになりました。朝の明かりってこんなに目まぐるしく変わっていくんだって思ってました。変わっていく瞬間って確かに美しいですよね。


矢崎:そうですよね。


ーー私も矢崎監督の変わってない点をいくつか感じました。これは監督の突出してるところだとも思うのですが、まずはタイトルセンスの素晴らしさ。なんでこんなタイトル付けられるんだろうっていつも思います。あと、出て来る女の子がみんなかわいいですよね(笑)。ファッションセンスもよくて、『三月のライオン』(92)もそうなんですけど、時代に左右されないルックみたいなものを、確実に捉えてる気がします。そして、ロケーション選びが抜群にいいなと。よく、こんなきれいな場所を見つけてきたなと。撮影する時間帯によるのかもしれませんが、切り取る画一枚一枚が、素晴らしいなと思います。




矢崎:どうなんですかね。『風たちの午後』の撮影当時は、俳優さんの持っている自前のもので衣装合わせをやったりしてるんですけど、いや、『XXX kiss kiss kiss』(15)とか『スティルライフオブメモリーズ』(18)でもご自前の衣装全部見せてもらってるから変わらないか。『三月のライオン』のときも、アイスの衣装の絵を書いて、こんな感じって見せたら専門のスタイリストさんたちからは「この格好は本当にひどい」って、結構言われたんですけど(笑)。


 僕の中では、アイスの胸にバツを付けたかったから、サスペンダーを逆にさせたんです。で、ハルオのほうは、背中にバツを背負っていて、その2人がキスするところを撮りたいなって思ってたんですよね。衣装ってそういうところがあるんですよ。


 一方で、ロケーションに関しては、相当難しくなってきていて、メインロケセットの周辺で探さなきゃならないとか。そうしないとスケジュールにはまらないって。インディーズの現場なら、シーンシーンの撮影場所がすごく離れてても場所優先で撮影してました。場所っていうのはすごく大事なんですよ。俳優さんのリングみたいなものだから、さあ、ここで思いっきり遊んでくださいっていう場所を探すのは、とても大事なことだと思うんですよね。


金子:『風たちの午後』では、美津が引っ越した部屋に夏子が潜入するとき、あの部屋の光景が、前に住んでた部屋と何かリンクしますよね。部屋に入った瞬間、台所にたまった食器などが光を放っていて、美しいんですよね。


矢崎:ジャン・シメオン・シャルダンの絵を見に行ったりして、静物の撮り方はすごく勉強してましたね。人が映ってないカットって、ものすごく大事だと思う。


ーー人が写ってないカットも印象的で、セリフも極端に少ないのですが、それでもちゃんとお話が進んでいきますよね。まさに映画的なストーリーテリングだなと感じます。


矢崎:セリフにほとんど興味がないのかもしれない。いつもクランクイン前には必ずメルヴィルの映画を見るんです。彼の映画はほとんどセリフがないんですよね。ああ、こういうことを忘れちゃいけないと、いつも自分を戒めるために見るんですけど。サイレント映画みたいな、画で組み立てるっていうのが映画だなと、どこかで思っているんですね。



 

金子:無音のシーンが、ワンシーンだけありましたね。


矢崎:ありますね。


金子:何か理由があるんですか。


矢崎:理由、ないですよ。


金子:すごく印象的でしたけどね。


矢崎:静かな映画がすごく好きなんですよ。映画館のロビーで、上映中の映画の音が扉から漏れてくるのが大好きなんだけど、扉の向こうが何かえらく静かだなっていうのも、好きなんですよね。


金子:最近の「分かる」映画ばかり見ている人がこの作品を見たら、ちょっと戸惑うかもしれませんね。



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