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映画のテーマは「和解」と「許し」『家族のレシピ』エリック・クー監督【Director’s Interview Vol.23】

映画のテーマは「和解」と「許し」『家族のレシピ』エリック・クー監督【Director’s Interview Vol.23】

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監督の周囲にいた人々をモデルに、母の料理までを再現



Q:『家族のレシピ』では実在する人物をそのままの役柄で登場させるなど、ドキュメンタリーのような質感を感じました。監督の過去作ではドラマとドキュメンタリーを融合させたものもあり、『家族のレシピ』でもそのような要素がとても強いですね。


クー:この作品の登場人物の多くは、私がシンガポールで出会ったの実在の人物がモデルになっているので、そう感じるのかもしれません。伊原剛志さんが演じた真人の父は、私が子供の頃に出会ったナゴヤさんという日本人シェフがモデルです。当時は日本の駐在員や転勤族がかなりいたので、彼はそういったお客さんのために日本料理を提供していました。シンガポールの女性が彼と実際に恋に落ちたこともあったのではないか、と想像したんです。


 松田聖子さんが演じた役は、10年来の私の友人がモデルです。彼女はシンガポール在住の日本人のシングルマザーで、日本人向けの雑誌の記者をしています。 私が『TATSUMI マンガに革命を起こした男』(11)という作品を撮った時に取材をしてくれたんですが、今では飲み仲間です。




 劇中で主人公の真人を助ける、ケイスケさんもシンガポールに実在するラーメン店の店主です。彼のお店は大人気でシンガポールに18軒もお店があり、シンガポール風のラーメンも提供しています 。松田聖子さんが今回出演してくれると聞いたら、彼はとてもはしゃいでいたので、なんとか同じシーンで出演させてあげようとしました(笑)


Q:真人の叔父を演じたマーク・リーさんがとても存在感があり面白かったのですが、彼はどんな役者さんなんですか?


クー:マーク・リーさんはシンガポールではとても有名なコメディアンで、ドラマでも演技力を発揮する才能があると私は感じていました。今回シナリオを読んでもらって、かなり自分と重なる部分があると感じて出演してくれました。斎藤工さんと、とてもウマがあって彼のシンガポールでの案内役を買って出てくれました。




 シンガポールでマークさんは大スターなんですが、彼もやはり松田聖子さんの大ファンで、かつては部屋に彼女のポスターを沢山はっていたそうです。だから彼女が現場に来た時には一緒に写真を撮って喜んでいましたよ(笑)。シンガポールでは一番人気のある有名なコメディアンですが、そんな人があんな風に聖子さんにオドオドしているのはとても面白かったですね(笑)


Q:シンガポールでの松田聖子さんの人気は、そんなにスゴイんですね。


クー:もう女神のようです!私も彼女のレコードを現場に持っていってサインしてもらいました。 以前、日本に行った時にプロデューサーの橘さんが「松田聖子さんを知っている」と言うので、それなら「是非会いたい!」とお願いしました。その時は結局会えなかったんですが、今回、美樹という役を聖子さんにオファーして、遂に願いが叶ったんです。


Q: 家族のストーリーというのは、世界共通のテーマだと思うのですが、他の国で本作の反応はいかがでしたか?


クー:ベルリンで上映された時は、取材する記者たちが作品を観て本当に泣いてくれました。彼らもお母さんやおばあちゃんの料理を思い出してくれたようです。この映画にはそういったものを呼び覚ます何かがあるんです。


 映画の中で真人(斎藤工)のおばあちゃんが作る料理がありますが、あの料理は実は私の母がかつて私に作ってくれた料理を再現しているんです。というのも実は撮影の直前に私の母が亡くなったので、そんな母へのオマージュという意味を込めました。



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