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映画を作るときにまず考えるのは「場」なんです『希望の灯り』トーマス・ステューバー監督【Director’s Interview Vol.25】

映画を作るときにまず考えるのは「場」なんです『希望の灯り』トーマス・ステューバー監督【Director’s Interview Vol.25】

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機械と人間の新たな関係



Q:フォークリフトなどの機械と人間の関係が、チャップリンの『モダン・タイムス』(36)やフリッツ・ラングの『メトロポリス』(27)などとはまた違った、新しい時代の関係性になっており、しかも憂いを帯びて描いているように思いました。


ステューバー(通訳):僕はメランコリックな男なんです(笑)。人混みの中に一人でいる時に感じる孤独感みたいなものに、すごく関心があるんです。今宿泊している渋谷のホテルの部屋で、次回作の脚本を一人で書いているのですが、窓下に広がる渋谷の人混みからも孤独を感じてしまうんです。


 また、機械と人間の関係ですごく気に入ってるのは、クリスティアンの気持ちと同調するかのように、フォークリフトが好調だったり不調だったりするところです。マリオンが視線を送ってくれないときには、フォークリフトが抱えているビールケースを落としそうになったりと、機械自身がまるで人間の感情と同期しているような感じがとても好きです。キューブリックの『2001年宇宙の旅』(68)の人間とマシンの関係も、同じように見ることができそうですね。ただし今回は、宇宙のような大空間ではなく、スーパーマーケットの小さな空間なのですが。




 スーパーマーケットでいうと、お客さんがいる昼間の姿を見せることには興味がなくて、裏側だけを見せることを意識しています。そこで働く人々の視点から、消費、資本主義を多重構造の中に入れ込んで描いたつもりです。


Q:ブルーノを演じたペーター・クルトさんの醸し出す哀愁や空気が、この映画ではすごく重要な要素だったと思いました。監督の前作にもペーターさんは出演されていますが、彼の魅力とはどんなものなのでしょう。


ステューバー:実はブルーノはこの物語の主人公でもあるわけで、劇中の物語は全て彼とつながっているんです。彼はクリスティアンにとって父親でありメンターでもあります。マリオンの情報に関しても彼が伝えてくれたりしますよね。




 前作『ヘビー級の心』でペーターに本当に感服しまして、今回も出演をお願いしたところ最初は断られたんです。それでも「ぜひ!」と強くお願いして何とか出ていただきました。彼はすごく東ドイツ的なところがあって、体もハートも大きな人です。そして、どんなに強面ぶっても心の温かさが隠せない目をしてるんですよね。役者さんの中には「カメラが恋するタイプ」の方がいますが、彼自身も持ち合わせているその資質が、今回のアウトサイダーの物語にピタッとはまってくれました。そして演じたキャラクターの奥底に引っ張り入れてくれたと思います。


 ロバート・デ・ニーロとマーティン・スコセッシが巡り会えたように、僕も数多くの俳優の中からペーターに巡り会えた。彼とはそういう関係だと思っていますね。


Q:デ・ニーロとスコセッシのようなコンビを、これからも期待しています。



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監督 トーマス・ステューバー/ Thomas Stuber

1981年 旧東ドイツのライプツィヒ生まれ。

2012年 中編『犬と馬のこと』原作:クレメンス・マイヤー

2015年 長編『ヘビー級の心』脚本:クレメンス・マイヤー

2017年 長編『希望の灯り』原作・脚本:クレメンス・マイヤー



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。






『希望の灯り』

4月5日Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開

公式サイト: http://kibou-akari.ayapro.ne.jp/

(c) 2018 Sommerhaus Filmproduktion GmbH

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