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【ミニシアター再訪】第11回 “渋谷劇場”の幕開け、ミニシアターの開花・・・その6 好奇心をくすぐるユーロスペース 後編

【ミニシアター再訪】第11回 “渋谷劇場”の幕開け、ミニシアターの開花・・・その6 好奇心をくすぐるユーロスペース 後編

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御三家②-イランの至宝を発見



 アジアの監督でいえば90年代のイランのアッバス・キアロスタミ監督との出会いもユーロには大きな意味があった。 


 「当時、イランの映画なんて誰も見たことがなかったので、新鮮な印象があったのでしょうね。うちの劇場のスタッフのひとりが、カンヌ映画祭で『友だちのうちはどこ?』(87)が売りに出ているのを見て、公開が実現しました。 


 そのスタッフとは、後に金沢でミニシアター(シネモンド)を作ることになる土肥悦子さんで、彼女は90年代に東京や金沢などで開催されたイラン映画祭の実行委員会事務局長もつとめている。 


 子供の純真な心を見つめた『友だちのうちはどこ?』は最初、銀座のテアトルシネマ西友にかけて好評を博した。93年12月にはこの作品の3年後の後日談にあたる『そして人生はつづく』(92)との2作品を連続上映して、9週間で1万2000人を動員。


 こうした作品では子供たちが主人公になっているせいか、どこかほのぼのとした雰囲気があったが、そのシンプルな持ち味を生かしつつも、監督がさらに成熟した作風を見せたのが『桜桃の味』(97)だ。こちらはカンヌ映画祭で、最高賞のパルムドールを獲得している(日本の今村昌平監督の『うなぎ』と同時受賞)。 


 自殺志願の中年男が主人公で、車を走らせながら、通りがかりの人々に、自分が自殺した後、遺体に土をかけてほしい、と持ちかける。死を近くに感じることで、むしろ、生へと近づいていく。そんなことを考えさせる作品だ。『友だちのうちはどこ?』とは異なる大人の視点も話題になって、98年1月から20週間の興行となり、3万9000人を動員。これまでのユーロの歴代興行成績では3位となっている。 


 その後もヨーロッパで撮った『トスカーナの贋作』(10、主演=ジュリエット・ビノシュ)や日本の加瀬亮が出演した『ライク・サムワン・イン・ラブ』(12)といったこの監督の作品も同劇場で公開している。 



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