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【ミニシアター再訪】第11回 “渋谷劇場”の幕開け、ミニシアターの開花・・・その6 好奇心をくすぐるユーロスペース 後編

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御三家③-フィンランドのとぼけた監督



 フィンランドの人気監督、アキ・カウリスマキの場合は、当初は別の配給会社が買い付けていたが、90年代以降はユーロが支持する監督のひとりとなった。シンプルながらも色彩に凝った映像、古いブルース音楽へのこだわり。そんな画面作りの向こうに社会の底辺で生きる人々のユーモアと悲哀感が見える。 


 「カウリスマキ監督の映画を最初に入れたのはKUZUI エンタープライズで、『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』(89)が上映されました。その後はフランス映画社やシネセゾンなどが買っていたんですが、途中で監督の転機となる事件が起きました。その頃から新作を誰も買わなくなったんです」 


 その事件とは監督の大半の作品に主演してきた個性派男優、マッティ・ペロンパーの死だった。95年に44歳の若さで他界。毒のあった彼を失うことで、監督の作風も変わり、以前よりさっぱりした(お茶漬けのような?)味になっていく。 


 「『浮き雲』(96)はペロンパの死後、撮った作品でした。期待しないで見たら、いい内容だったので、うちの劇場で公開したんですが、結果的にはかなりヒットして、ここからカウリスマキの第2の黄金期のスタートなりました」 


 『浮き雲』はユーロでは97年に上映されて、10週間、1万5000人動員。『街のあかり』(06)は07年に上映されて、9週間、1万6000人動員。また、第2の黄金期の代表作となった『過去のない男』(02)はユーロよりキャパの大きな恵比寿ガーデンシネマで上映して成功した。また、昨年公開された『ル・アーヴルの靴みがき』(11)も好調で、この監督の日本での根強い人気を印象づけた。 


 「かつてのミニシアターの世界では、お互いが持っている作品をどう見せるのか、みんなで考えていました。カウリスマキ監督でいえば『街のあかり』のように小さな作品はうちの劇場にかけましたが、カンヌで賞をとった『過去のない男』などはもっと客席の多い恵比寿ガーンシネマにかけてうまくいきました」


 「ミニシアター同士が共同体を作ることで独占化されず、うまくいっていたんでしょう。カラックス作品にしても大きめの作品はシネマライズで、地味な『ボーイ・ミーツ・ガール』はうちで上映しました。キアロスタミ作品も集客が望めそうな『友だちのうちはどこ?』は銀座のテアトルシネマで上映しています」 


 ユーロと他の劇場との協力関係もあって、3人の監督たちは日本のミニシアター・ファンの間で根強い人気を獲得してきた。 


 「カラックスにはアートの魅力と映画愛があり、キアロスタミには哲学があり、カウリスマキには人生の味わいがありました」 









◉フィンランドのアキ・カウリスマキ監督の味わい深い『浮き雲』(96)、サイレント映画『白い花びら』(98)もユーロスペースで上映。中国のチャン・イーモウ監督の衝撃のデビュー作『紅いコーリャン』(87)も空前の大ヒットを記録。主演女優、コン・リーはハリウッド進出も果たした。



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