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【ミニシアター再訪】第17回 映画の街・銀座からの巻き返し・・・その6 シャンテ傑作選1 フランス映画社作品

【ミニシアター再訪】第17回 映画の街・銀座からの巻き返し・・・その6 シャンテ傑作選1 フランス映画社作品

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台湾から『悲情城市』



 フランス映画社とシャンテの蜜月時代を代表する監督は他にもいて、台湾のホウ・シャオシェンやギリシャのテオ・アンゲロプロスの代表作もこの劇場で封切られた。こうした監督たちについて高橋専務は回想する。 


 「フランス映画社は監督たちと家族的なつきあいを続けていました。『悲情城市』(89)のホウ・シャオシェン〔候孝賢〕などは帝国ホテルに泊まり、近くにある中華料理店の慶楽が好きで、そこで食事をしていました。テオ・アンゲロプロスとも、ひじょうに家族的なつきあいでしたね。ご夫妻と世界の監督や製作者とのおつきあいがあって、彼らの作品の公開窓口はフランス映画社が担当することが多かった気がします。ただ、監督が成功すると、この会社のお金では動かないという問題もありました」 


 難解なイメージで知られるギリシャの巨匠、故テオ・アンゲロプロス監督の場合、『霧の中の風景』(88)、『こうのとり、たちずさんで』(91)、『ユリシーズの瞳』(95)等、多くの作品がシャンテで上映されたが、特に興行成績がよかったのが『永遠と一日』(98)。シャンテ歴代22位で99年4月から13週の上映で興収7000万円となった。この作品は『ベルリン・天使の詩』の名優、ブルーノ・ガンツ主演で、不治の病に侵された老詩人が難民の少年と過ごす最後の一日が圧倒的な映像美で綴られる。 


 台湾のホウ・シャオシェンの監督作では1940年代後半の激動の歴史の中で生きる人々を描いた大作『悲情城市』(若きトニー・レオン主演)がシャンテの歴代11位。90年4月から17週間上映され、興行収入9700万円。ホウ・シャオシェン作品は89年に『恋恋風塵(れんれんふうじん)』(87)と『童年往事/時の流れ』(85)も日本公開されているが、『悲情城市』は興行的にも決定打となった。 


 「あの頃、シャンテはいいものをやりたいという思いしかなく、作品の国籍は気にしていませんでした。『悲情城市』はアジア映画としてははしりだったと思います。監督も当時は今ほど有名ではありませんでした。そして、『悲情城市』が大ヒットした時、フランス映画社の社長、柴田さんに、この監督は他にもいいのがあるんです、と言われて、旧作だった『風櫃(フンクイ)の少年』(83)や『冬冬(トントン)の夏休み』(84)も上映しました。これも『悲情城市』の成功があってのことです。この作品はけっして分かりやすい内容ではなかったのですが、なかなかいい映画でしたよね。この後、この映画の舞台が観光の名所になったようです」 


 90年のシャンテはまさに“ホウ・シャオシェン・イヤー”となり、4月の『悲情城市』に続いて、『風櫃の少年』が7月、『冬冬の夏休み』が8月に上映されている。 



◉台湾出身のホウ・シャオシェンは『悲情城市』(89)が大ヒットとなった。劇場プログラムにはフランス映画社と縁の深い評論家の蓮實重彦が寄稿。




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