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【ミニシアター再訪】第18回 映画の街・銀座からの巻き返し・・・その7 シャンテ傑作選2 アメリカ・気鋭監督の出世作

【ミニシアター再訪】第18回 映画の街・銀座からの巻き返し・・・その7 シャンテ傑作選2 アメリカ・気鋭監督の出世作


 シャンテシネには次々と刺激的な話題作が登場する。80年代から90年代にかけて、アメリカのインディペンデント映画界から新しい監督が登場したが、スティーヴン・ソダーバーグ監督の『セックスと嘘とビデオテープ』(89)やスパイク・リー監督の『ドゥ・ザ・ライト・シング』(89)もこの劇場にかけられ、若い観客層に人気を博した。


 ソダ―バーグは『トラフィック』(00)でアカデミー監督賞、リーは『ブラック・クランズマン』(18)でアカデミー脚本賞を受賞。今ではアメリカ映画界を代表する才人たちとして知られる。


 そんな彼らの新鮮な、かつ大胆な出世作をかつてシャンテの副支配人が振り返る。


※以下記事は、2013年~2014年の間、芸術新聞社運営のWEBサイトにて連載されていた記事です。今回、大森さわこ様と株式会社芸術新聞社様の許可をいただき転載させていただいております。


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ソダーバーグ監督、26歳の衝撃デビュー



 シャンテシネ(現TOHOシネマズシャンテ)のオープンでは『ベルリン・天使の詩』(87)や『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』(85)のようにフランス映画社配給のBOWシリーズ(ベスト・オブ・ザ・ワールド(Best Of the Worldの略)が好評を博したが、もう一館では『紳士協定』(47)『國民の創生』(1915)(共に東宝東和配給)といった映画史上の名作を上映していた。この路線に加え、ふだんはメジャー作品を入れている大手の洋画会社がひそかにかかえる個性的な作品群が上映されるようになり、劇場に新たな活気が生まれていく。 


 80年代後半はアメリカのインディペンデント映画界に力があった時代だが、その新しい波が日本のミニシアターにも押し寄せた。 


 89年のサンダンス映画祭で観客賞を獲得して、その後、カンヌ映画祭に出品されて見事に大賞(パルムドール)を受賞したのが、スティーヴン・ソダーバーグ監督のデビュー作『セックスと嘘とビデオテープ』(89、日本ヘラルド映画配給)だった。 


 監督は当時26歳。カンヌ映画祭では史上最年少のパルムドール受賞監督として一躍脚光を浴びた。シャンテでは89年12月16日から90年4月5日まで15週の上映となり、シャンテの歴代興行成績は第8位と大健闘した(興行収入1億640万円)。 


 この作品の上映時のことをシャンテの副支配人だった高橋昌治東宝専務取締役(当時)はこう振り返る。 「映画はそれなりにおもしろかったし、タイトルも当時としてはインパクトがありました。お客様もよく入りました」 


 89年のカンヌ映画祭の審査委員長をつとめた『ベルリン・天使の詩』のヴィム・ヴェンダース監督が高く評価し、「この作品に映画の未来を見た」という理由で、パルムドールを与えた。また、主人公役を静かに演じたジェームズ・スペイダーも主演男優賞を受賞した。 


 自分では性的な行為を行うことができず、ビデオに撮った女性たちの性的な告白にしか興奮できないという彼のキャラクター設定が、当時は鮮烈な印象を残した。ヘンタイ的な行為なのにスペイダーが演じることで、内向的な現代人の苦悩がにじんで見えた。 


 日本では89年8月に宮崎勤の幼女誘拐殺人事件が明るみに出て、大人の女性と普通の恋愛ができない青年の存在がクローズアップされた時代でもある。機械に囲まれ、生身の人間とのコミュニケーション(=恋愛)に実感が持てない。そんなバーチャルな時代の始まりを告げる作品でもある。 



◉『セックスと嘘とビデオテープ』と『ドゥ・ザ・ライト・シング』のアメリカで出版されたシナリオブック。ソダーバーグ監督は撮影日誌の中で『ドゥ・ザ・ライト・シング』に対して賛辞を送っている 


 この作品の力を評価しつつも、当時のスティーヴン・ソダーバーグに関して高橋専務は語る。 


 「この時、ソダーバーグがこれほどメジャーな監督になるとはまったく思わなかったです。その後もずっとアート系監督でいくと思っていました。特に大きな変化が見られたのは『オーシャンズ』シリーズあたりでしょうか。この作品の主演男優のジョージ・クルーニーらとの人脈というのも大きかったのでしょう」 


 確かに80年代後半に登場したソダーバーグはインディペンデント映画界の才気ある新鋭だったが、その後は『トラフィック』(00)でアカデミー監督賞を受賞し、エンタメ志向の強い『オーシャンズ』シリーズも大ヒット。現代のアメリカを代表する大物映画人のひとりとなった。 


 「彼の近作『サイド・エフェクト』(13)を見ても、昔だったら、きっちり大きな形で公開できるひじょうにいい映画だと思います。僕が娯楽映画としてすごいと思ったのは、あれだけの中身を1時間40分くらいにまとめている。だらだら撮ったら、2時間半か、3時間になります。すごいことですよね。今のソダーバーグは職人ですね。こういう才能をきちんと拾うハリウッドのプロデューサーや製作会社の目はすごいですね。また、それにこたえる人もすごいし……」 


 高橋専務はアメリカの監督の層の厚さについてそう語る。 


 「ソダーバーグもそうですが、その監督が有名になるきっかけとなる作品をシャンテではけっこう上映しています」 



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