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【ミニシアター再訪】第21回 映画の街・銀座からの巻き返し・・・その10 愛されるシネスイッチ銀座

【ミニシアター再訪】第21回 映画の街・銀座からの巻き返し・・・その10 愛されるシネスイッチ銀座

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 かつて名画座だった銀座文化がミニシアターに変わり、装いも新たにスタート。そんなシネスイッチは今も愛されている銀座の劇場のひとつ。


 あえてミニシアターの入門者向き、ということを意識していて、親しみやすい良作を上映している。


 歴代ナンバーワン・ヒットは国民的な人気を獲得した『ニュー・シネマ・パラダイス』(89)。さらに『ライフ・イズ・ビューティフル』(97)、『リトル・ダンサー』(00)なども大ヒット。近年では『チョコレート・ドーナッツ』(12)が意外な人気作となった。


 レディース・デーを最初に始めた劇場でもあり、女性の観客を意識したプログラムも組まれ、邦画の『かもめ食堂』(06)なども好調だった(最近では樹木希林の出演作の数々も人気を博したという)。


 どこかほっとするような温かさのあるシネスイッチ。その背景を支配人(14年当時)と番組編成の担当者が語ってくれた(2019 年7月から新しい支配人となっている)。


 また、かつてはネットのチケット予約ができなかったが、現在はデジタルでの予約システムも導入されている。


※以下記事は、2013年~2014年の間、芸術新聞社運営のWEBサイトにて連載されていた記事です。今回、大森さわこ様と株式会社芸術新聞社様の許可をいただき転載させていただいております。


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幅広い客層



 銀座四丁目交差点の近くにあるミニシアター、シネスイッチ銀座は1987年12月にオープンして、2014年で27年目を迎える。


 この劇場から歩いて15分のところには東宝系のミニシアター、シャンテシネ(現TOHOシネマズシャンテ)もあり、ふたつの劇場はオープンした年も同じ。どちらも銀座・日比谷地区を代表する老舗のミニシアターとしてヒット作を送り続けている。


 シャンテの方は80年代や90年代にかけて主にフランス映画社配給の、監督の作家性を押し出した作品を上映してきたが、シネスイッチ銀座はもっと親しみやすい作品を好んできた。


 シャンテの興行成績1位は難解との声もあったアート系作品『ベルリン・天使の詩』(87)。一方、シネスイッチの歴代1位はもっと大衆的な『ニュー・シネマ・パラダイス』(89)。こうした過去の人気作品からもふたつの劇場のテイストの違いが分かる。


 「うちのお客様の層は本当に幅広いんです。これまでの歴代興行成績のベスト3は『ニュー・シネマ・パラダイス』『ライフ・イズ・ビューティフル』(98)『リトル・ダンサー』(00)なんですが、どの作品も“笑いあり、涙あり”という作風です。お客様にとって映画の入り口となるような作品を上映することで、いろいろな方に来ていただいていると思います」


 上映作品の傾向について、そう振り返るのは97年からシネスイッチ銀座の番組編成を担当してきた簱興行の吉澤周子次長(当時)である(それ以前の番組編成はヘラルド・エースが担当)。大学で映画製作を学んだ後、名画座の早稲田松竹で番組編成を担当し、その後、今の劇場でのプログラム作りに取り組んでいる。


 シネスイッチを初めて訪れたのは87年のオープニング作品『あなたがいたら/少女リンダ』(87)が上映された時のこと。学生時代にひとりの観客としてこの劇場で映画を見た。


 「学生時代はどちらかというとアンチ・ハリウッド派で『パリ、テキサス』(84)のような映画が好きでした。都内のミニシアターにも通っていて、『あなたがいたら/少女リンダ』を見るためにシネスイッチ銀座にも来ましたが、その頃は他の劇場との個性の違いはそんなに意識していなかったと思います」


 『あなたがいたら/少女リンダ』(87年12月18日~88年1月28日上映)は英国の新鋭監督デヴィッド・リーランドのデビュー作で、コメディチーム、モンティ・パイソンのコメディ映画やニール・ジョーダン監督の『モナリザ』(86)の共同脚本家でもあったリーランドの、ピリリと辛口のユーモアも入った青春映画。小さな町で反抗的な生き方を貫こうする10代のヒロイン、リンダを演じたエミリー・ロイドのキラキラした魅力が心に残る佳作だ。


 「この映画、当時、フジテレビの天気予報などでも映像が使われていたんですよ」


 オープン当時のことをそう振り返るのは吉村俊一支配人(当時)だ。前回の連載で書いたように、シネスイッチの前身は銀座文化劇場で、劇場オーナーだった簱興行、ヘラルド・エース、フジテレビの三社の協力のもとで作られたミニシアターである。そのためシネスイッチ作品の予告編がフジテレビではよく流れていたが、天気予報まで活用していたとは驚きだ。



◉シネスイッチ銀座の第1回作『あなたがいたら/少女リンダ』の英国版のシナリオ本。主演のエミリー・ロイドは、その後、ロバート・レッドフォード監督の『リバー・ランズ・スルー・イット』にも出演している。


 吉村支配人は簱興行が経営する別の地域の劇場スタッフだったが、銀座文化時代からこの劇場に手伝いに来ていて、やがてはスタッフの一員となり、ニール・ジョーダン監督の『プルートで朝食を』(05)が上映されていた時(06年)、支配人となった。


 「かつて銀座文化の下の階は松竹系の封切り館で、寅さんなどを上映していました。それがシネスイッチ銀座になってからは客層も変わりました」 吉村支配人はシネスイッチ開館時をそう振り返る。



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