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『幸福なラザロ』現代に「イノセント」を受け入れてくれる場所はあるのか?

(c)2018 tempesta srl・Amka Films Productions・Ad Vitam Production・KNM・Pola Pandora RSI・Radiotelevisione svizzera・Arte France Cinema・ZDF/ARTE

『幸福なラザロ』現代に「イノセント」を受け入れてくれる場所はあるのか?

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「イノセント」の死と復活



 ラザロは、彼らが街に出て失った純真さや、他者への思いやりの象徴である。そんなものは、現代社会で生き抜くうえで、ほとんど何の意味も持たない。だからラザロの居場所の無さというのは、いまの社会がそれを必要としなくなってしまったということを、表しているように見える。



『幸福なラザロ』(c)2018 tempesta srl・Amka Films Productions・Ad Vitam Production・KNM・Pola Pandora RSI・Radiotelevisione svizzera・Arte France Cinema・ZDF/ARTE


 新約聖書において、ラザロという名は二度出てくる。富める者と清貧の者との違いを表す象徴としての人物と、キリストが奇跡によって甦らせたキリストの友人である。人間が生きている限り、優しさや思いやりの心は再び生まれるチャンスがある。しかし、同時に人々の手によって、何度でも死を迎えることになるかもしれない。ラザロという「イノセント」は、一体どこへ向かい、誰が受け入れてくれるのだろうか。 


 また旧約聖書において、善人がほとんどいなくなり、堕落した罪の街と呼ばれた「ソドム」と「ゴモラ」は、神によって焼き尽くされ滅ぼされた。それは、核兵器の存在や環境汚染、戦争など、多くの問題を持つ現代の世界を考えると、むしろリアリティを持つ人間社会の末路のイメージではないだろうか。われわれの社会がどうなっていくかは、人間たちが、それぞれの“ラザロ”をどう扱っていくかにかかっているのかもしれない。



文: 小野寺系

映画仙人を目指し、さすらいながらWEBメディアや雑誌などで執筆する映画評論家。いろいろな角度から、映画の“深い”内容を分かりやすく伝えていきます。

Twitter: @kmovie



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『幸福なラザロ』

4/19(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー

公式サイト: http://lazzaro.jp

(c)2018 tempesta srl・Amka Films Productions・Ad Vitam Production・KNM・Pola Pandora RSI・Radiotelevisione svizzera・Arte France Cinema・ZDF/ARTE


※2019年4月記事掲載時の情報です。

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