『あの頃ペニー・レインと』の日本版を探せ！あの有名俳優・タレントが監督した隠れた珠玉作とは？　音楽史と個人史を同時に振り返る

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2017.09.27森直人

青春の終わりと、ザ・ロッカーズのその後

　『ロッカーズ』は青春映画だが、「青春の終わり」を見つめた映画でもある。ザ・ロッカーズは1982年に解散し、1990年にしばらく再結成するが、やがて1996年10月27日、谷はバイク事故で早世してしまう。享年37歳。この映画は自叙伝『アメイジング・グレース』と同じく、谷への友情に捧げられたものだ。

　まさしく『あの頃ペニー・レインと』のキャメロン・クロウと同じように、陣内孝則も個人史と、音楽史がクロスする場所の人間模様を優しく浮かび上がらせ、映画に刻んだ。ただ両者のニュアンスに大きな違いがあるとすれば、『ロッカーズ』があくまでノスタルジックに「青春の終わり」を弔ったのに対し、『あの頃ペニー・レインと』が描いたのは「少年期の終わり」であり、むしろ主人公＝キャメロン・クロウの人生はこれから始まる、という未来展望の余韻を持っていたことだ。ザ・ロッカーズ解散以降の陣内は、潔く、というよりは、余りにもあっけらかんと俳優業に転向してしまう。いま、ロックとは決して若者のものってわけではないし、生涯この音楽と付き合うベテラン・ミュージシャンも数多いが、当時はまだ「若気の至り」と一体化したものだった。そんな「ロックが若かった」時代のモードも感じさせる。

　陣内はそのあと『スマイル　聖夜の奇跡』（2007年）、『幸福のアリバイ～Picture～』（2016年）を監督しているが、やはり第一作の輝きは完全に別格だ。

　なお本作のサウンドトラックは、石井聰亙（現・岳龍）監督のカルト映画『爆裂都市 BURST CITY』（1982年）で陣内と共演した池畑潤二（当時、ザ・ルースターズ）がドラマーを務めるロックンロール・ジプシーズが担当している。ちなみにザ・ロッカーズのメンバー3人を演じる岡田義徳、佐藤隆太、塚本高史は、宮藤官九郎脚本のTBS系テレビドラマ『木更津キャッツアイ』（2002年）で先に共演済みだが、実はその前の段階で『ロッカーズ』のキャスティングはすでに決定していたとのこと。ともあれ結果的に抜群のチームワークとなった。

　『あの頃ペニー・レインと』にはまった人にはぜひオススメしたい。紛れもなく『ロッカーズ』は、日本の音楽映画史にその名を刻む必見作なのだ。

文：森直人（もり・なおと）

映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ～廃墟のなかの子供たち～』（フィルムアート社）、編著に『ゼロ年代＋の映画』（河出書房新社）ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「TV Bros.」「メンズノンノ」「キネマ旬報」「映画秘宝」「シネマトゥデイ」などで定期的に執筆中。

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