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『あの頃ペニー・レインと』の日本版を探せ!あの有名俳優・タレントが監督した隠れた珠玉作とは? 音楽史と個人史を同時に振り返る

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『あの頃ペニー・レインと』の日本版を探せ!あの有名俳優・タレントが監督した隠れた珠玉作とは? 音楽史と個人史を同時に振り返る

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『あの頃ペニー・レインと』あらすじ

厳格な母に育てられ、セックスもドラッグも知らない優等生。そんなウィリアムが地元誌に書いた原稿がローリングストーン誌の目に留まり、フツーの15歳の生活から一転、ロックの世界に没頭してゆく。ブレイク寸前のバンドに同行取材することになったウィリアムは、グルーピーのリーダー、ペニー・レインと出会う。それは切ない恋の始まりだった・・・。


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カリスマ的なヴォーカリストだった陣内孝則。彼が監督した『ロッカーズ』は観ないと損の拾い物!



 わずか15歳で『ローリングストーン』誌の音楽ライターとして業界デビューしたという異色の経歴を持つ人気映画監督、キャメロン・クロウ。彼が当時、有名ロックバンドのツアーに同行したエピソードを中心に描いた名作が『あの頃ペニー・レインと』(2000年)だ。無垢な少年が少しだけ大人への階段を上るイニシエーション(通過儀礼)の甘酸っぱさに満ちたこの映画は、同時に1970年代前半のロック・シーン、さらにはロック・ジャーナリズムの実情を生々しく知ることができる。


 実際にポップ・ミュージックの歴史の渦中にいた当事者が、のちにメガホンを取り、映画という形で青春を自伝的に振り返る。これは立体的な心情のこもった貴重なレポートになるわけだが、果たして同様の例、日本には存在するのだろうか?


 ひとつには、日本を代表する作詞家として知られる松本隆が監督した映画『微熱少年』(1987年)がある。彼がドラマーとして参加していた伝説のバンド「はっぴいえんど」を結成する前、高校生時代をモデルにした物語だ。だがこれはDVDになっていない。


 そこでいま手軽に鑑賞できる一本――しかも観ていなければ単純に損をする、隠れた珠玉作をおすすめしたい。陣内孝則が初監督した映画『ロッカーズ』(2003年)だ。


 陣内孝則といえば、バブル時代のトレンディドラマでブレイクして以降の、ご陽気な俳優・タレントというイメージしか持っていない人も多いだろう。だが、もともとは1980年代初頭に短期間活躍した「ザ・ロッカーズ」(TH eROCKERS)のヴォーカリスト(何度かの再結成を経て現在も活動中)。通称「めんたいロック」と呼ばれる博多のロック・シーンの第二世代(第一世代は鮎川誠らが在籍したサンハウスなど)の代表的なバンドのひとつであり、ザ・ルースターズやザ・モッズ、ARBらと並んで全国的に注目された(厳密にいうとザ・ルースターズは北九州のバンドだが)。


 当時のザ・ロッカーズのライヴ映像はYouTubeで検索して欲しい。剃刀のような長身・痩身で、時にはニューヨーク・ドールズのデイヴィッド・ヨハンセンのようなスタイルで歌う若き陣内の姿が確認できる。


 そんな彼が、1998年にやたら泣ける自叙伝『アメイジング・グレース』(幻冬舎刊)を発表。この名著を原案とし、映画『ロッカーズ』ではプロデビュー前の自分たちを中心に描いた。


 この映画の作風は、現在の陣内のイメージに近い。というより、そもそも野暮ったいほどの人懐っこさが彼の本質なのだろう。スタイリッシュな気取りなどまったくなく、微笑ましいほどのサービス精神が横溢した娯楽青春映画だ。もちろん、人生の大切な宝物の時代を転写した一世一代の切々とした想いにもあふれている。


 まさに陣内版『あの頃ペニー・レインと』。ただし「あの頃」を象徴するのは可愛い女子ではない。彼にとっての「ペニー・レイン」は、いまは亡きギタリストの谷信雄(1959年生~1996年没)である。



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