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『国宝』800ページの原作と175分の映画。その比較も愉しい本年度最大の話題作

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

『国宝』800ページの原作と175分の映画。その比較も愉しい本年度最大の話題作

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任侠の一門に生まれた喜久雄(吉沢亮)は、類い稀な美しさと歌舞伎の才能を上方歌舞伎の名門当主、花井半二郎(渡辺謙)に見出され、部屋子として半二郎の下で暮らすことになる。そこで喜久雄は半二郎の実子、俊介(横浜流星)と出会う。別世界から歌舞伎の世界へ飛び込んだ喜久雄と、生まれながらに将来を約束された俊介。2人はライバルとして互いを高め合い、芸に青春を捧げて行く。だが、彼らの向かう先には想像もつかない皮肉な運命が待っていた。


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吉田修一と李相日を結びつけたテーマ



 歌舞伎にさほど精通していなかった原作者の吉田修一が劇場やDVDで歌舞伎を鑑賞するうち、2014年頃に「国宝」の執筆を発想。その後、伝手を辿って、四代目中村鴈治郎を紹介された吉田は、鴈治郎の計らいで黒衣を作ってもらい、鴈治郎について回る形で東京の歌舞伎座はもちろん、博多座、松竹座、京都歌舞伎練場にまで出入りするようになる。それは2017年に朝日新聞で連載がスタートする前から連載中にいたるまで続き、歌舞伎にまつわるあらゆる知識、細部、その臨場感が文字に置き換えられていった。小説家の浅田次郎はその読後感を、「読み終えた時、小説を読了したのではなく、芝居の序幕から大切りまでを見おえたような気分になった」と絶賛。結果、小説「 国宝」は2019年第69回芸術選奨文部科学大臣賞と第14回中央公論文芸賞をダブル受賞する。



『国宝』©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会


 ちょうどその頃、歌舞伎の女形の映画を撮りたいと考えていたのが李相日監督だ。吉田とはこれまでも『悪人』(10)と『怒り』(16)でコラボしてきた、言わば盟友である。そもそも、李が歌舞伎の女形に興味を持ったのは15年ほど前らしく、だとすると時系列でのスタートは吉田より早かったことになる。当初映画化が難航したのは、実在する役者をモデルにストーリーを考えた場合、あまりにも知識が追いつかずハードルが高かったことが挙げられる。そんな苦い経験から、李は映画化には慎重だった。




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