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『黒い瞳 4K修復ロングバージョン』大人のための、そして、大人になるための映画

© 1987 Excelsior Film-TV. © 2010 Cristina D’Osualdo. All rights reserved.

『黒い瞳 4K修復ロングバージョン』大人のための、そして、大人になるための映画

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『黒い瞳』あらすじ

アテネを経てイタリアに向かう客船。ひと気のない食堂の、窓際のテーブルに座る初老の男は、食堂に入ってきたロシア人の紳士に、自ら人生を語り始める…。男の名はロマーノ。イタリアの田舎町で生まれた彼は、大銀行家の一人娘エリザと結婚し富を得たが、夫婦の仲は冷え切っていた。銀行が倒産の危機に瀕する中、ロマーノは一人家を出て湯治場に身を寄せ、そこで美しいロシア人の女性アンナと出会い、激しい恋に落ちる。一通の手紙を残し消えたアンナを追い、ロマーノはロシアに向かうが…。


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越境的で渋い雰囲気が横溢する『黒い瞳』



 文学、演劇界の巨星アントン・チェーホフの没後120年、巨匠に愛された伝説的ダンディ俳優マルチェロ・マストロヤンニの生誕100年の節目に最も相応しい映画、『黒い瞳』(87)が、「4K修復ロングバージョン」としてリバイバルされる。


 マストロヤンニがカンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した本作は、その枯れた渋みをも魅力に変えた彼が濃厚に味わえる一作だ。その物語は、チェーホフの「犬を連れた奥さん」など複数の作品やロシアの歌「黒い瞳」の歌詞を基にした、失った過去とともに生きる男の壮大な回想である。娯楽を前面に押し出した内容ではないが、だからこそ現在では貴重となった真の“大人の映画”に仕上がっている。



『黒い瞳 4K修復ロングバージョン』© 1987 Excelsior Film-TV. © 2010 Cristina D’Osualdo. All rights reserved.


 監督は、ヴェネツィア国際映画祭やカンヌ国際映画祭、そしてアカデミー賞など、世界でさまざまな賞を受賞している名匠ニキータ・ミハルコフ。ソ連とイタリアの合作として製作された『黒い瞳』は、冷戦下にもかかわらず国際的なコラボレーションを実現、ロシアの作家チェーホフの世界観を西ヨーロッパの感性と融合させた貴重な一作でもある。


 マストロヤンニ、チェーホフ、ミハルコフ……そして東西の文化の合流地が、本作『黒い瞳』と言っていい。ここでは、そんな越境的で渋い雰囲気が横溢する本作が何を描こうとする作品なのかを、明らかにしていきたい。




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