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『ノスフェラトゥ』100年ぶりに蘇ったゴシック・ロマンスホラーの金字塔

© 2024 Focus Features LLC. All rights reserved.

『ノスフェラトゥ』100年ぶりに蘇ったゴシック・ロマンスホラーの金字塔

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『ノスフェラトゥ』あらすじ

不動産業者のトーマス・ハッターは、仕事のため自身の城を売却しようとしているオルロック伯爵のもとへ出かける。トーマスの不在中、彼の新妻であるエレンは夫の友人宅で過ごすが、ある時から、夜になると夢の中に現れる得体の知れない男の幻覚と恐怖感に悩まされるようになる。そして時を同じくして、夫のトーマスやエレンが滞在する街にも、さまざまな災いが起こり始める。


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ロバート・エガース、悲願のリメイク企画



 ロバート・エガースは、厳格な古典主義作家だ。彼はイギリスの映画雑誌サイト&サウンドに、自分が影響を受けたフェイバリット・ムービーを10本紹介しているが、どれも映画史に燦然と輝くクラシックばかり。とても1983年生まれとは思えないラインナップだ。


①『吸血鬼ノスフェラトゥ』(22)ドイツ映画/F・W・ムルナウ

②『裁かるるジャンヌ』(28)フランス映画/カール・Th・ドライヤー

③『黄金』(48)アメリカ映画/ジョン・ヒューストン

④『七人の侍』(54)日本映画/黒澤明

⑤『仮面/ペルソナ』(66)スウェーデン映画/イングマール・ベルイマン

⑥『2001年宇宙の旅』(68)イギリス・アメリカ映画/スタンリー・キューブリック

⑦『アンドレイ・ルブリョフ』(66)ソビエト映画/アンドレイ・タルコフスキー

⑧『地獄の黙示録』(79)アメリカ映画/フランシス・フォード・コッポラ

⑨『エレファント・マン』(80)イギリス・アメリカ映画/デヴィッド・リンチ

⑩『フィツカラルド』(82)西ドイツ映画/ヴェルナー・ヘルツォーク

出典:(*1)


 特に小さかった頃夢中になったのが、『吸血鬼ノスフェラトゥ』。ブラム・ストーカーが1897年に発表した怪奇小説『吸血鬼ドラキュラ』を元にした、ホラー映画の古典だ。


「(小学校の図書室にあった)吸血鬼の本に、オリジナル版『吸血鬼ノスフェラトゥ』を演じたマックス・シュレックの写真が載っていた。今まで見た中で一番かっこいいと思ったね。キャプションを読んで、映画を観たくなった。母がVHSカセットを探してくれて、それを注文して、1ヵ月後に郵送されてきたんだ。大げさな演技とか、すべてが奇妙だった。でも、映像が劣化していたせいもあると思うけど、リアリティがあったんだ」(*2)


 『エルム街の悪夢』(84)のようなスプラッターには目もくれず、彼はすっかり白と黒が織りなす荘厳な世界に引き込まれてしまった。高校3年生のときには、友人と一緒に『吸血鬼ノスフェラトゥ』の舞台を演出した経験もある。彼にとってこの作品は、クリエイターとしての原点なのだ。



『ノスフェラトゥ』© 2024 Focus Features LLC. All rights reserved.


 それにしても、『ドラキュラ』ではなく『ノスフェラトゥ』という耳馴染みのないタイトルにしたのは何故なのか。実は、製作会社のプラナフィルムは映画化権を獲得していない状態で撮影に踏み切っていた。そのため、ドラキュラ伯爵はオルロック伯爵、主人公のジョナサン・ハーカーはトーマス・ハッター、吸血鬼に対峙するヴァン・ヘルシング教授はブルワー教授という名前に変更。舞台もイギリスからドイツに移し替えられた。


 しかしブラム・ストーカーの未亡人フローレンスが、ドイツで勝手に夫の作品が公開されていることを聞きつけ裁判をおこす。裁判所は、『吸血鬼ノスフェラトゥ』のネガをすべて破棄するように命じたが、時すでに遅くプリントはドイツから流出していた。


 もし全てのプリントが破棄されていたら、ロバート・エガース少年がこの映画と出会うことはなかっただろうし、悲願のリメイク企画…『ノスフェラトゥ』(24)を手がけることもなかっただろう。歴史の必然と偶然によって、本作は産み落とされたのである。




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