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『ノースマン 導かれし復讐者』ロバート・エガース監督 A24発〜大作行きを経験した映画作家の“不変”【Director’s Interview Vol. 275】
『ウィッチ』(15)『ライトハウス』(19)と、A24が目をかけてきた映画監督ロバート・エガース。時代モノを撮り続け作家主義を地で行く彼が、製作費概算7,000~9,000万ドルともいわれる大作へとチャレンジした。1月20日に劇場公開を迎える『ノースマン 導かれし復讐者』だ。
本作は、9世紀を舞台にした復讐劇。叔父の謀反で父を殺された王子が成長し、ヴァイキングとなって父の無念を果たさんとする。『LAMB/ラム』(21)の脚本を務めたショーンが共同脚本で参加し、アレクサンダー・スカルスガルド、ニコール・キッドマン、イーサン・ホーク、ビョークらが出演。エガース組の経験者であるアニャ・テイラー=ジョイ、ウィレム・デフォーも存在感を放つ。
CINEMOREでは、エガース監督のクリエイションにフォーカス。大作にどのように挑んだのか、技術面やスタッフワーク、貫いた作家性について語っていただいた。
Index
「当時のままを写し撮る」こだわり、エガース作品の画&音づくり
Q:『ノースマン 導かれし復讐者』を拝見して、現代に作ったとは思えない「当時の物語が出土した」感覚を抱きました。本日はそうしたクリエイティブ部分を中心に伺えればと思いますが、まずは印象的な炎や闇をどのように映していったのかを教えて下さい。『ウィッチ』のサバト(魔女集会)のシーンでも火が印象的に使われていましたね。
エガース:僕は『ウィッチ』『ライトハウス』『ノースマン 導かれし復讐者』等に共通して「当時のままを写し撮る」をコンセプトにしていました。そのため、当時使っていたであろう光源をそのまま用いています。『ウィッチ』であればろうそくの火であり、『ライトハウス』であればランプの灯など……。『ノースマン 導かれし復讐者』では、部屋の真ん中にあるたき火などですが、『ウィッチ』との違いは本作がフィルムで撮影していることです。
『ウィッチ』のようにデジタルで撮影していればろうそくの火のように光量が高くなくても(人物の顔などを)きちんと映し出せるのですが、今回はそうはいかない。そのため、照明などで増補し、たき火の揺らぎに合わせて照明を明滅させたりして撮影しました。
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Q:もうひとつ伺いたかったのは、音についてです。ウィレム・デフォーさん演じる道化ヘイミルの声の低音がすごく効いていると感じましたが、例えばリバーブを効かせるなどセリフの音周りもエフェクトをかけたのでしょうか。
エガース:おっしゃる通り、アムレートと父オーヴァンディル(イーサン・ホーク)、ヘイミルによる成人の儀式のシーンなど、声の加工をしています。また、ヴァイキングがオオカミやクマになりきるシーンでは、動物の鳴き声を入れています。ただ、最初は及び腰でした。というのも、声をマニピュレートしてしまうと、途端に安っぽくなってしまうおそれがあるから。そのため、バランスにはかなり気を付けました。
実は『ウィッチ』でも、手法は違えど声の加工を行っています。ブラックフィリップ(黒山羊)が話すシーンでは、環境音を全部消して、最後の一音節に別のカットで撮った音節を重ねたりしているんです。
今回はドルビーアトモス形式でミキシングを行っているのですが、やっぱりその環境が一番マッチしているように思います。5.1chや7.1chで聴くとややトゥーマッチかもしれません。もうちょっと色々なフォーマット用に調整すべきだったという思いはありますね。