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『ノースマン 導かれし復讐者』ロバート・エガース監督 A24発〜大作行きを経験した映画作家の“不変”【Director’s Interview Vol. 275】
超大作への初挑戦をなしえた、意識改革
Q:『ウィッチ』『ライトハウス』はミニマムな関係性で展開する物語でしたが、今回は格段にスケールアップしました。例えば主人公が壁を乗り越えて略奪をするシーンなども、エキストラが大量にいますし、地面はぬかるんでいて衣装や身体の汚れなどを考えると何度も繰り返し撮影することは難しいのかな?と感じました。現場のコントロールも挑戦尽くしだったのではないでしょうか。
エガース:おっしゃる通り、前2作とは全く違う体験となりました。今回は常連のスタッフ陣で制作していますが、これだけの規模の映画を撮った経験はない。最初は「不可能かもしれない」とも思ってしまいました。そこで、こう考えることにしたんです。我々は3本の映画を撮るんだと。
僕たちは『ウィッチ』で農場を、『ライトハウス』では灯台を舞台に撮りました。『ノースマン 導かれし復讐者』では、それが3つになったという意識です。アムレート(オスカー・ノヴァク/アレクサンダー・スカルスガルド)の故郷である島、略奪をする村、アイスランドの農場といった具合に。そう考えることで、自分たちの経験と照らし合わせていきました。
そして、いま挙げていただいた略奪シーンですが、緻密に振り付けしたものを長回しで撮っています。ですが、みんなが思うように動いてくれない場合もあり、実際は10から多い場合は30テイクくらい重ねています。
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Q:前シーンとの“つながり”も考慮すると、リセットも含めて相当大変ですね……。衣装も何着も着替えを用意したのでしょうか。
エガース:そういう場合もありましたが、どっちかといえば逆に、見分けがつかないくらい泥んこにしてしまおうとしていました。
Q:最初から泥まみれだったら、テイクを重ねられる……(笑)。
エガース:そうなんです。衣装担当には「もっと泥をかけてほしい」とお願いしていました。「流石に勘弁して!」と言われたらお酒でもおごろうと思っていました(笑)。