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『エレファント・マン』見世物小屋の象男が求める、本当の意味での「人間らしさ」とは

『エレファント・マン』見世物小屋の象男が求める、本当の意味での「人間らしさ」とは


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産業革命による空前の繁栄



 実在の障害者の半生を描いた秀作『エレファント・マン』(80)は、マイノリティの内なる苦痛と周囲の人間の在り方を問うた作品だ。監督は、『イレイザーヘッド』(77)で一躍名を馳せた、奇才デヴィッド・リンチ。映画は、象男と呼ばれ過酷な運命を歩んだ、ひとりの青年の実話を元にしている。


 物語の背景となる後期ヴィクトリア朝時代のイギリスでは、18世紀半ばの産業革命を機に、依然として工業化を波及させていた。蒸気機関の発明に伴う、機械工業の急速な進展は、農耕の弱化を招き、石炭の燃焼によって大気の汚染が進んだ。大都市ではコレラをはじめとする伝染病が流行し、切り裂きジャックのような猟奇犯罪も大きな問題となっていた。



 作中では、この19世紀末の退廃的なロンドンの様子を、実に幻想的なモノクロフィルムで描き出す。俊秀の撮影者フレディ・フランシスの、見事に計算されたカメラワークは、当時のイギリス文明を極めてリアルに映している。モノクロの映像から俯瞰できるのは、19世紀末イギリスの不況ぶりである。産業革命後期のイギリスは、ドイツ、アメリカなどの新興経済国の台頭によって、不況の道を強いられていた。


 しかし、なおも工業を基礎とした資本主義に邁進し、都市部では農村からの人口流入によって、インフラ整備に遅れが生じるなど、労働環境は劣悪化。健全さは失われた。そのような技術革新と、労働の移り変わりの中で、下層、中層階級らの興味は、見世物小屋に向いていた。奇形の象男=エレファント・マンこと、青年ジョゼフ・ケアリー・メリック(ジョン・ハート)は、各地を巡業する見世物芸人として、非人間的な扱いの中で、国じゅうを渡り歩いていた。



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