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『We Live in Time この時を生きて』10年間の軌跡を綴った非線形のラブストーリー

© 2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION

『We Live in Time この時を生きて』10年間の軌跡を綴った非線形のラブストーリー

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『We Live in Time この時を生きて』あらすじ

新進気鋭の一流シェフであるアルムートと、離婚して失意のどん底にいたトビアス。何の接点もなかった二人が、あり得ない出会いを果たして恋におちる。自由奔放なアルムートと慎重派のトビアスは何度も危機を迎えながらも、一緒に暮らし娘が生まれ家族になる。そんな中、アルムートの余命がわずかだと知った二人が選んだ型破りな挑戦とは──。


Index


異なる時間軸が糸のように絡み合う



 映画の歴史は浅い。その端緒をリュミエール兄弟の『工場の出口』(1895年)に求めたとして、その歴史は100年ちょっとしかない。20世紀のはじめ、映画は単なる大衆娯楽でしかなかった。イタリアの映画理論家リッチョット・カニュードが、時間芸術(音楽、詩、舞踊)と空間芸術(建築、彫刻、絵画)を統合する第七芸術として映画を位置付けたことで、“CINEMA”はようやくその価値を認められたのである。


 確かに映画は、時間と空間を自由に飛び越えることができる。過去を振り返るフラッシュバックと、未来を予想するフラッシュフォワードを、自在に操ることができる。類人猿が骨を放り投げると、いきなり宇宙船が航行しているシーンに切り替わることだって可能だ(『2001年の宇宙の旅』/68)。時系列に沿ったリニア的ストーリーテリングから解き放たれ、時空をシャッフルするノンリニア的ストーリーテリングを獲得したことで、語りの自由度は圧倒的に増した。


 例えば、新聞王の生涯を複数の関係者の証言から解き明かしていく『市民ケーン』(41)。現代パートと過去パートをカットバックさせながら、マフィアの興亡史が綴られる『ゴッドファーザーPART II』(74)。ある一日が何度も繰り返される『恋はデジャ・ブ』(93)。古今東西の映画作家たちは、時間をランダムに配置したり、折り曲げたり、重ねたりすることで、新しい表現を追求していったのである。


 特にクエンティン・タランティーノ監督の『パルプ・フィクション』(94)以降は、時系列がランダムにシャッフルされた映画が作られるようになり、ノンリニア的ストーリーテリングはますます複雑さを極めていく。おそらく、いま最も自覚的に時間と戯れている映画作家は、クリストファー・ノーランだろう。時系列が逆向きに進行するカラーパートと、時系列がそのまま進行するモノクロパートが交互に展開する『メメント』(00)や、陸が1週間、海が1日、空が1時間の時間軸で同時進行する『ダンケルク』(17)など、その実験精神はとどまることを知らない。



『We Live in Time この時を生きて』© 2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION


 直線的に語られる作品と比べて、非線形の語り口による映画は、鑑賞者に強烈なインパクトを残す。フローレンス・ピューとアンドリュー・ガーフィールドという、映画界で最もホットな二人が主演した『We Live in Time この時を生きて』(24)もまた、ある男女の10年間の軌跡をノンリニアな語り口で綴った作品だ。異なる時間軸が糸のように複雑に絡み合うことで、物語がドラマティックに高揚する、非線形のラブストーリーである。





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