1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. Michael/マイケル
  4. 『Michael/マイケル』スーパースターの光と影、その「光」を求めて
『Michael/マイケル』スーパースターの光と影、その「光」を求めて

®, TM & © 2026 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

『Michael/マイケル』スーパースターの光と影、その「光」を求めて

PAGES


『Michael/マイケル』あらすじ

圧倒的な歌唱力と革新的なダンスパフォーマンスで、アーティストの枠を超え、全世界的なアイコンとなった“キング・オブ・ポップ”=マイケル・ジャクソン。しかし、その栄光の裏には、早熟の天才ゆえの孤独感、強権的な父親の呪縛、家族への愛と自分の中に溢れるビジョンとの間で葛藤する一人の人間の姿があった…。


Index


ドラマの軸として置かれた父との確執と対立



 その訃報が流れたとき、世界中が驚きと悲しみに包まれた。日本時間では、2009年6月26日の朝。マイケル・ジャクソンが50歳でこの世を去った。マイケル自身、「これが最後のコンサート」と宣言していた「THIS IS IT」ツアーが、同年の7月13日から始まるはずだった。当然のごとく全日程は中止。そのリハーサルの模様などを収めた映画『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』(09)は、彼への追悼となって世界中でヒットを記録する。間違いなく、マイケルは時代を象徴するスーパースターであった。


 マイケルの急死の直接の要因とされるのは、不眠治療のための麻酔薬の過剰投与。その「遠因」とされるのが、遡ること25年、頭部への火傷事故である。ペプシコーラのCM撮影中、演出で使われた花火が引火。マイケルは頭皮に重度の火傷を負い、それ以来、痛み止めの薬物に依存せざるをえなくなった。このペプシCMの撮影シーンが、映画『Michael/マイケル』(26)で生々しく再現される。そもそもマイケルがCM撮影を引き受けたのは本意ではなかったことも、本作は伝える。


 当時、マイケルはアルバム「スリラー」の驚異的なセールスによって、ソロアーティストとしての不動の人気を確立していた。しかし父親のジョーは、マイケルの知名度を利用し、「家族のため」という名目で、他の兄弟とともにジャクソンズ(元ジャクソン5)のツアーに参加させ、その流れでペプシのCMをマイケルに半ば無理矢理やらせた……と受け止められる作りになっている。マイケルも「父のため、これが最後」と覚悟して臨み、あのような事故に繋がったのは、悲壮極まりない。このように『Michael/マイケル』のストーリーの中心に据えられるのは、マイケルと父ジョーの関係性である。たしかに波乱万丈の人生を「まとめる」ツールとして、この軸は必要だったと考えられる。



『Michael/マイケル』®, TM & © 2026 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.


 では、その父とのドラマが作品の中心となってエモーショナルな感動をもたらしているのか?そうとも言えないのが、この『Michael/マイケル』だ。冒頭から間もなく、マイケルにボーカルの才能を見出したジョーが、幼い息子をベルトで叩くスパルタ指導を行うなど、後の対立への伏線が描かれるが、映画を観るわれわれは、やがてマイケルを中心としたジャクソン5のパフォーマンスに目を奪われることになる。最初のハイライトは、1968年、ジャクソン5がシカゴのリーガル・シアターで「さよならは言わないで」を歌うシーン。このステージで大手レコード会社モータウンへの道筋が作られただけあって、マイケルの天才的なボーカルが全開となる。ちなみに「さよならは言わないで」は、モータウンに入った後の曲なので時系列の齟齬があるものの、そこも映画的演出として許容したい。


 その後も作品のテンションが上がるのは、ジャクソン5からジャクソンズ、ソロとなったマイケル・ジャクソンの代表曲を披露するシーンとなり、それこそが多くの人が劇場で体感したがっていることを、作り手たちが理解していた証である。これはプロデューサーが同じグレアム・キングの『ボヘミアン・ラプソディ』(18)と共通したスタイルで(ステージに立つ前の主人公の背中から、過去に戻る演出もまったく同じ)、ミュージシャン伝記映画にとって、ある意味、正統派の作りである。もちろん成功するかどうかは、曲のパフォーマンスの「再現度」で、『Michael/マイケル』はそこに集中的に力が入る作品となった。




PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
counter
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. Michael/マイケル
  4. 『Michael/マイケル』スーパースターの光と影、その「光」を求めて