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『Michael/マイケル』スーパースターの光と影、その「光」を求めて

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『Michael/マイケル』スーパースターの光と影、その「光」を求めて

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ミュージシャン映画としてのひとつの「解」



 このMTVへの強硬な態度が伝えるのは、ブラックミュージックが世の中から過小評価されてきことへのマイケルの反発で、彼の人生に常にまとわりついていた人種差別問題を浮き彫りにする。ただし『Michael/マイケル』は、そこに深く切り込むことはしない。整形や白斑症、チンパンジーのバブルスをはじめとした動物への偏愛、冒頭でふれたペプシCMの事故など、「光と影」の「影」の部分は、あくまでも事実として列挙され、深くは突っ込まないスタンス。それはそれで映画全体を観やすいものにしている。いくらスーパースターとはいえ、その功績を過剰に賞賛するだけの映画になったら、絶対に受け入れられない。そのバランスを、ギリギリ保とうとした盛り込み方ではないか。


 こうした伝記映画では遺族の協力、承諾も欠かせない。本作はマイケル・ジャクソン・エステート(財団)も関与しており、そのせいか現在もエステートに関わり、マイケルの代理人も務めたジョン・ブランカが、前述のMTVとの交渉シーンなどを含め、やけに“理解のある人”として描かれたキライもある。一方で、エステートの協力があったからこそ、かつてジャクソン・ファミリーが暮らしていたエンシノの自宅での撮影も行うことができ、マイケルの創作の場であった自宅内の離れの部屋も、細部まで完全再現されたと言っていい。


 ただ、映画協力への遺族の態度は分かれ、協力を拒んだリビー(ジャクソン家の長女)、ジャネット(三女)、ランディ(同六男)は映画の中に登場すらしない。ジャクソンズのヴィクトリー・ツアーのシーンでは、実際にはそこにいたランディの姿がすっぽり抜け落ちていたりする。今回の物語部分には無関係だが、マイケルの娘パリスも映画には協力しなかった。残念だったのは、ダイアナ・ロスの不在で、マイケルの本格的な映画出演作『ウィズ』(78)で共演し、後に遺言で彼の子供たちの後見人に指名されるほど親密な仲にあったダイアナ・ロスは、キャストも立てて撮影が行われつつ、最終的に法的な問題と配慮で本編からカットされてしまった。



『Michael/マイケル』®, TM & © 2026 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.


 それもこれも、「描けない」事象が発生するのは伝記映画での宿命。“毒親”として描かれた父のジョーも、ジャクソン5がモータウンを捨ててまで、自分たちのやりたい音楽を求め、エピック/CBSへ無謀ともいえる移籍を叶えた際、じつは彼の意地が功を奏したという話もあり、そうした複雑で多面的な部分を、映画というものはシンプルにわかりやすく形成しがちである。


 近年のミュージシャン伝記映画は、一定の時期に絞り込んで主人公の実像や内面を掘り下げる、『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』(24)や『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』(25)のようなパターンも目立つ。これらは対象のモデルが存命という共通項もあるが、今は亡き伝説のミュージシャンの場合、『ボヘミアン・ラプソディ』、『エルヴィス』(22)のように、キャリア全体を俯瞰しつつ、最重要のパフォーマンスに“向かっていく”までの軌跡をエモーショナルにまとまる形式が多い。


 マイケル・ジャクソンの場合、あまりにも描くべきエピソードが多く、取捨選択の苦心の末、1本の映画にまとめるには「スリラー」「BAD」という社会現象的ピークの時期をハイライトにしたわけで、そこはひとつの“正解”だったとも思う。スーパースターの「輝き」だけは、確実に『Michael/マイケル』の中に宿っているのだから。



文:斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。クリティックス・チョイス・アワードに投票する同協会(CCA)会員。




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『Michael/マイケル』

6月12日(金)より全国公開

配給:キノフィルムズ

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