向かって左から:スティーブ・コックス監督、マシュー・ウォーカー監督、廣木綾子監督
『映画 ひつじのショーン かぼちゃ畑の怪物!』公開記念 スティーブ・コックス監督&マシュー・ウォーカー監督 × 廣木綾子監督 特別鼎談【Director’s Interview Vol.597】
現場で生まれる葛藤がストーリーの軸に
Q:今作はアクションやコメディなど楽しいシーンが多く、大人も子どもも肩の力を抜いて笑って楽しめる作品でした。一方で、『ひつじのショーン』の映画シリーズでは人生において大切なことがテーマとして描かれ、それがキャラクターの魅力を引き立てていると感じます。今作はショーンが「主人公症候群」に陥り、問題を一人だけで解決しようと暴走してしまう場面があります。ショーンのように周りが見えなくなってしまうことは、誰しも経験のあることではないでしょうか。このテーマについて詳しく伺うとともに、監督たちにもこのような経験はあるかお聞きしたいです。
ウォーカー:主人公・ショーンの周りには、群れの仲間や犬のビッツァー、牧場主といった魅力的なキャラクターたちがいます。彼らの関係性が生み出すダイナミズムは、コメディにぴったりです。ただ長編映画にするにあたって、よりエモーショナルなストーリーも描きたいと考えました。
ショーンはこれまで、群れのために問題を解決する役割を担ってきました。そこで今回は、彼がその役割にのめり込みすぎるとどうなるのかを探ってみたいと思ったのです。きっかけは、ティミーのために何かをしてあげたいという願いでした。しかし、ショーンは群れの意見に耳を傾けず、マッドサイエンスという「闇の道」へと足を踏み入れていきます。そして自分の過ちに気づき、群れとの絆を取り戻そうとするのです。そこが、この映画の重要なポイントでした。

『映画 ひつじのショーン かぼちゃ畑の怪物!』 © 2026 / AARDMAN ANIMATIONS Ltd - All Rights Reserved
コックス:単なるコメディではなく、何度でも観たくなるような映画にするには、面白い作品であることはもちろん、心を動かすテーマを持った物語であることも大切です。私自身、フィルムメーカーとして、本来なら耳を傾けるべき仲間の声を聞けないこともあります。それは日々の葛藤でもあります。もちろん、私たちの周りには素晴らしいチームがいます。彼らの才能やスキルを信頼していますし、一緒に映画を作り上げていくうえで大きな助けになっています。それでも時には、仲間の意見に耳を傾けられない時もある。そういう意味では、今作のテーマは、映画制作のプロセスそのものを反映しているとも言えるでしょう。
廣木:ショーンは羊ですが、「主人公症候群」ってとても人間的だなと。私自身も結構そういうところがあるので、すごく共感できました。自分の中で引っかかるところや、共通点のようなものが少しでもあると、作品の見方が広がったり、映画に対する印象が変わったりする。今回はそんな経験もさせてもらいました。
私は自分でストーリーを考えるときは、ピンポイントだけど「共感してもらえる人には分かるよね」というところを選んでしまいがち。共感してくれる人の数は少なくても、深く刺さればいいなという思いでアイデアを考えています。今回のショーンの物語は、そんな「主人公症候群」がちょっと強めな私にとても刺さるストーリーでした。