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おとぎ話の向こう側へ――
大人のためのグリム童話 手をなくした少女
レビュー
あらすじ
林檎――水車小屋
水車小屋に暮らす父・母・娘の三人家族。水も枯れ果て、日々の食料にも困っている。ある日、父親の元に悪魔が現れる。「水車の裏にあるもの」と引き換えに、黄金を与えようというのだ。林檎の木だと思い込んだ父親は取引に応じ、枯れていた川に黄金が流れ込む。生活が変わる。
しかし悪魔が求めたのはその林檎の木に登っていたもの――彼の一人娘だった。富を失いたくない父親は、悪魔に追い詰められる。母親は野犬に食われて死んだ。娘は窮地の父親を救うため、自分の両腕を切り落とさせる。父親との関係性にもウンザリした娘は家を出る。父親は絶望し命を断つ。
梨――王宮
腕を失った少女は雨のなか森を行く。生きるために梨を食べようとするが、足を滑らし、川に落ちる。そこで彼女を待つのは川の精だった。川の精は語る――梨は王子のものであること、少女がそれを求めることは運命なのだという。王宮に足を踏み入れる少女を、王子は受け入れ、后とする。結婚式で少女は金色の義手を得る。充分な食料と愛。何一つ不自由ない生活。子供も授かった。
だが、戦争が始まった。王子は戦いに出る。そして悪魔が暗躍する。出産の知らせの手紙を書き換え、化物の赤子が生まれたと王様に信じさせる。さらには、庭師を騙し、母親もろとも殺すよう仕向ける。少女は生まれたばかりの赤子を抱え、王宮から逃げ出す。庭師から密かに渡された、新世界からの魔法の種を懐に入れて。
甘橙と無花果――どこか遠くの場所
赤子を抱え様々な地を転々とする少女は、川の精に導かれながら、安住の地を見つけだす。実用性に欠いた黄金の義手は捨て去り、自らの腕で血を流しながらその地を耕し、種を植え、自給自足の生活をする。一方戦争に敗れた王子が城へと戻ってくる。悪魔の策略に気づき、妻と息子を探すため再び旅に出る。
数年が経った。少女は母となり、息子は元気に育った。旅を続ける王子はいつしか妻の生家に辿り着く。そこにあるのは自ら命を断った父親らしき男の姿、黄金の川のほとりに流れ着いた義手、そして、白骨化した両腕。その骨のひとかけらを王子はそっと飲み込む。悪魔はまだ諦めない。ついに王子が愛する妻と息子と再会するなか、いまや母親となった少女の魂をめぐる、最後の戦いが始まる。その果てに、少女とその家族が最後に向かう場所は、はたして?
作品情報
スタッフ
監督:セバスチャン・ローデンバック
製作総指揮:ジャン=クリストフ・スラジョン
原作:グリム兄弟
脚本:セバスチャン・ローデンバック
編集:サンティ・ミナーシ
セバスチャン・ローデンバック
アニメーション:セバスチャン・ローデンバック
音楽:オリヴィエ・メラノ
キャスト
アナイス・ドゥムースティエ
ジェレミー・エルカイム
フィリップ・ローデンバック
サッシャ・ブルド
オリヴィエ・ブロシュ
フランソワーズ・ルブラン
エリナ・レーヴェンソン
『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』
2018年8月18日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開
© Les Films Sauvages – 2016
※2018年8月記事掲載時の情報です。
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