A24とは編集段階で、何度も話し合いを重ねた
SYO:『WAVES/ウェイブス』の劇中にはカメラが360度回転するシーンがあって、藤井監督と「本当に自由な撮影をしているね」と話していたんです。それができたのは、製作スタジオがA24だからなんでしょうか?
シュルツ:360度のカメラやアスペクト比、色調や音楽については全て最初から脚本に書き込んでいました。役者もスタッフも出来上がりがイメージできるようにそういったやり方をしたのですが、実際の現場ではドリューと自由にやっていましたね。
A24とはカメラワークの打ち合わせはするんですが、彼らが口出しすることは全くなかったです。日々の撮影成果のチェックはするけど、撮り方は自由にやらせてくれました。撮っている時の雰囲気が、完成品の雰囲気。自由さを感じてくれたら嬉しいです。
藤井:例えば編集段階で、A24サイドから指示や要望が来ることはあったんですか?
シュルツ:ファイナルカットに行くまでは本当に厳しい道のりで、A24と何度も何度も話し合いを重ねました。まず自分で編集したファーストカットが3時間半あったんです。そのあとニューヨークの知り合いの編集マンのところに持っていき、そこからはどれだけ尺を短くできるかの戦いでした。
それをA24に見せてフィードバックをもらい、また修正版を見せての繰り返しで、僕が本当に作りたかったものは何だったんだ?と思うくらいに気の遠くなるような作業でしたね。
頭が変になりそうになりながら現実を生きる――というような期間を経て生み出されたのが、『WAVES/ウェイブス』です。
SYO:藤井監督から「もし日本で31曲を使用したら、かかる使用料がとんでもない」というお話を伺って。この辺りはどうやってクリアされたんですか?
シュルツ:とても大変でした……(笑)。ただ、当初から音楽を脚本に組み込んでいたから、スタッフみんなの中で大体の予算感についての共通理解は取れていたんです。
藤井:なるほど。
シュルツ:製作にGOサインが出てすぐ、ミュージック・スーパーバイザーがアーティストに交渉を始めてくれました。手紙を書いて、試作を送って、とにかくできるだけ値段を下げてもらうお願いをする――この繰り返しでしたね。
ただ、アーティスト側もみんな理解を示してくれて、すごくラッキーだったと思います。ほぼ1年かけて権利を取得していって、実は最初の映画祭に出品した際には、まだカニエ・ウェストから承諾を得ていなかったんです。